社説(11/30):米中貿易協議/難題を乗り越え早期決着を

©株式会社河北新報社

 「世界経済の見通しは非常に不確実で、高い下方リスクにさらされている」

 国際通貨基金(IMF)は10月中旬、米国と中国との貿易摩擦が各国の景気に及ぼす影響について、警戒感を示す声明を出した。

 設備投資の抑制などを理由に、今年の両国の経済成長率を引き下げたのをはじめ、世界経済の行方に「黄信号」を点滅させた格好だ。

 昨年から続く米中協議の行方に再び暗雲が立ち込めている。10月に一時、歩み寄りで一致し、今月中に両首脳による部分合意を目指していた。しかし、香港の人権・民主化問題がクローズアップされ、新たな火種が加わったこともあって、長引く気配となっている。

 世界経済を一層減速させれば、両国にも打撃になるのは、IMFの警鐘からも明らかである。依然として横たわる幾つかの溝を埋めて合意に至るよう、歩み寄りを急いでもらいたい。

 部分合意を難しくしているのは、米国が求める農産物の購入と、中国の要求する追加関税の取り消しなどで擦れ違っている点が大きい。

 トランプ米大統領は、年500億ドル(約5兆4000億円)の農産物購入にこぎ着けたと主張している。これに対し、中国は購入量の文書への明記などに難色を示しているという。

 中国側が「段階的に取り消すことで合意した」と説明した発動済みの追加関税については、トランプ氏が否定する事態にもなった。

 追加関税の撤廃に応じるためには、知的財産の保護強化や技術の強制移転問題の解決が必要としている。中国の国家体制の構造に関わるテーマだけに、すんなりとはいかない状況になっている。

 さらに、デモの続く香港情勢が拍車を掛けている。香港の民主化や自治を支援する「香港人権・民主主義法案」を米議会は可決し、トランプ大統領も署名して成立した。

 「一国二制度」を中国が守っているかどうか、米政府に毎年検証を求める内容となっている。すかさず「内政干渉であり、報復措置を取る」と反発を受けるなど、不透明感は増す一方だ。

 当初は、今月半ばにチリで開催を予定していたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、両首脳の会談をセットする手はずだった。  治安悪化により、中止となったのも誤算となっている。12月15日には、米政権による新たな制裁関税の発動が予定され、その前に決着するかどうかが焦点となる。

 来年秋の大統領選まで1年を切り、国内の支持動向を気にするトランプ氏と、足元を見て揺さぶる中国と我慢比べの構図もちらつく。

 部分合意を探る過程では報復合戦を控え、一時休戦を実現させた。その時点に戻り、着地点を見つけてほしい。