【社説】河井前法相辞任1カ月 「説明責任」口先だけか

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 河井克行前法相(広島3区)が、妻で自民党参院議員の案里氏の公選法違反疑惑などが報じられたのを受け、辞任してから1カ月たつ。

 7月の参院選広島選挙区のさなか、案里氏の陣営が選挙カーに乗る運動員に法定の2倍に当たる報酬を支払った疑いが持たれているほか、河井氏自らも贈答品疑惑を指摘された。

 河井氏は辞任の際、疑惑について「しっかり調査し説明責任を果たす」と明言し、案里氏も同様のコメントを公表した。

 にもかかわらず、その約束を果たさないばかりか、夫妻そろって国会を欠席し続け、公の場に姿を見せていない。なぜ説明できないのか。疑念と不可解さが募るばかりだ。

 案里氏を公選法違反の疑いで刑事告発する動きが相次いでいる。地元広島の後援会関係者からも「本人の言葉で丁寧に説明すべきだ」との声が上がるのも当然だろう。有権者に対する責任を放棄していると言われても仕方あるまい。

 「説明責任」は口先だけなのか。政治家としての資質が問われていると深刻に受け止めなければならない。

 この1カ月で、2人に問いたいことはまた増えた。

 参院選を控えた4月の広島県議選で、案里氏らが複数の自民党県議に現金を配って歩いていた疑惑が浮上した。事実なら公選法違反の可能性がある。議員の職を失う重大な事案だ。

 一方、河井氏も法相時代の10月、広島県内の高速道路で、制限速度を60キロも超える時速140キロで秘書に車を運転させたと報じられた。

 法の番人である法相が違法行為を指示するなど、言語道断である。法相辞任の理由を「疑義が生じたこと自体、許されないからだ」と生真面目に述べていた。それならば何があったのか、堂々と語るべきだろう。

 忘れてはならないのは、疑惑の説明責任を果たさないまま、だんまりを決め込んでいるのは2人だけではないことだ。

 安倍政権では、公選法違反疑惑で経済産業相を辞任した菅原一秀氏や外国人在留資格を巡る口利き疑惑で厚生労働政務官を辞した上野宏史氏ら多々いる。

 しばらく雲隠れしていれば、国民が忘れてくれると高をくくっているのだろうか。安倍晋三首相は「任命責任を痛感する」と繰り返すが、こちらも口先だけとしか思えない。

 国民に説明を尽くすように指導力を発揮すべきだが、首相は「一人一人の政治家が襟を正して説明責任を果たすものだ」と、本人任せに終始する。国民の政治不信を解消する本気度が伝わってこない。

 自民党も、説明責任を軽んじる姿勢を黙認しているかのように映る。岸田文雄政調会長(広島1区)は、河井夫妻の疑惑について「説明努力を注視する」と述べている。

 それならば、野党の求めにも積極的に応じ、国会で事実関係を明らかにする場を設けるべきではないか。

 国会ではいま、首相自身が関わる「桜を見る会」の問題の陰に隠れた形になっているが、いずれの疑惑もうやむやに済ませることなど許されない。

 国会議員が自らの疑惑について説明責任を果たせないのなら、その職を辞するしかない。