ロッテの時代がやって来る? ドラフト、FA、トレードで戦力強化

ソフトバンクの球団事務所に退団のあいさつに訪れ、ロッテへの移籍を明かした福田秀平外野手=11月26日、ヤフオクドーム

 今オフのプロ野球界に、ちょっとした異変が起きている。ドラフト、FA、トレードといったストーブリーグの主役と言えば巨人を中心に回るのが通り相場だったが、今年はロッテが話題をさらった。

 シーズン終了を合図に始まったFA戦線。真っ先に人気を集めたのが、ソフトバンクの福田秀平外野手だった。

 選手層の厚い「鷹軍団」では、控えに甘んじるケースも多かったが走、攻、守すべてにレベルの高いオールラウンダー。しかも年俸が安くて獲得の際にソフトバンクへの人的補償も発生しないとあって、宣言残留を認めるソフトバンクを含めると西武、ヤクルト、中日、楽天、ロッテの激しい争奪戦となった。

 その福田が1カ月近く悩んだ末に出した結論はロッテ入団だった。

 前日には楽天からFA宣言していた美馬学投手もロッテ入りを表明。こちらも1年間先発ローテーションを守れる先発要員として巨人、楽天らとの争奪戦を制している。

 一方でチームからはベテランの鈴木大地選手が楽天にFA移籍したものの、今年のFA戦線はすべてロッテを中心に回った格好だ。

 来季に向けて、どうしても獲得しなければならない人材だった。

 まず、投手陣に目を向けると若返りの過渡期を迎えている。今季も石川歩投手こそ安定した働きを見せたが、エースの涌井秀章投手に衰えが見える。

 二木康太、種市篤輝、岩下大輝らの若手投手の成長に光明を見出したものの、シーズンを通して先発の柱として計算できる美馬は是が非でも欲しい。

 次に外野事情を見ていくと、荻野貴司、清田育宏、角中勝也のレギュラー選手たちは、いずれも30歳過ぎのベテランぞろいで故障も抱えている。

 チーム内競争を激しくするためにも、戦力に厚みを持たせる意味でも福田はうってつけのピースなのだ。

 近年のロッテには上げ潮ムードがある。特に目を引くのがドラフトでの快進撃である。

 一昨年に安田尚憲、昨年は藤原恭大、そして今年は佐々木朗希投手と超高校級の逸材を他球団との競合の末に1位指名で獲得。日本ハムの清宮幸太郎と人気を二分した安田は今季、イースタン・リーグで本塁打と打点の“2冠王”に耀いている。

 鈴木が楽天に移って穴の開く三塁の定位置を奪えば、クリーンアップ定着も夢ではない。

 「大谷翔平以上の素材」と騒がれる佐々木には、来春キャンプでは1軍切符を用意しているようだが、まずはプロ仕様の体を作ってからが勝負になる。

 160キロを超す剛球右腕の動向は注目を集める。

 FAやドラフトだけでなく、井口資仁監督を中心とした「勝者のメンタリティー」がチーム内に根付きつつあるのも強味だ。

 就任1年目の昨季こそ5位に沈んだが、今季は69勝70敗4分けの4位。昨年から勝ち星を10積み上げて、最後まで楽天とAクラス争いを展開した。

 ソフトバンクの前身であるダイエーからメジャーに渡った井口監督は、腹心のヘッドコーチに鳥越裕介氏を招き、今季からは投手コーチに日本ハム時代に優勝経験のある吉井理人氏を招聘している。

 2005年を最後に優勝から遠ざかっているチームを改革するには、勝利の味を知る外部の血の導入は必然だった。

 ロッテにはもう一つ、頼もしい「戦力」がある。

 美馬も福田もロッテ入りの一つのキーワードに挙げたのが「あの熱烈な応援」である。

 球場全体を揺るがすファンの熱い声援は、甲子園の阪神をしのぐほど。フロントが次々と応援企画を用意して日本一の応援が盛り上がるので、観客動員数は過去最高を記録し続けている。

 「まだまだチームが強くなれば、球団の魅力が高まり、観客動員も増えて上に向いたスパイラルで上がっていける」と、河合克美オーナー代行兼球団社長も確かな手応えを感じている。

 ソフトバンクと西武の2強が続くパ・リーグにあって、覇権奪取はそう簡単ではない。

 だが、そこへ割って入るような「時の勢い」をロッテに感じる。

 令和元年、災害で痛めつけられた地元の復興のためにも、明るい話題を提供してほしいものだ。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

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