石木ダム 二審も住民側敗訴 福岡高裁「公共の利益優越」

高裁判決を報告する馬奈木弁護団長(右)=福岡高裁前

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、ダムの公益性を認めた一審長崎地裁判決を支持し、原告側の請求を棄却した。原告側は上告する方針。
 西井裁判長は判決で「ダム建設事業によって得られる公共の利益は、失われる利益に優越する」と認め、国土交通省九州地方整備局(九地整)の判断に「裁量の逸脱や濫用はない」と原判決をほぼ全面的に踏襲した。利水に関する専門家の意見書は「判断を左右しない」と退けた。
 一審は、同市の利水と川棚川の治水を主目的とする同ダムの必要性などが争点となった。原告側は利水、治水、いずれの面でも建設の必要性はなく、水没予定地の反対住民13世帯の土地を強制的に収用する公共性を欠くと主張。これに対し、長崎地裁は昨年7月、県の治水計画や同市の水需要予測などは合理性を欠くとは言えず、事業認定した九地整の判断は適法と結論付けた。
 控訴審で原告側は引き続き、ダムは不要と訴えた。利水面では、同市の水需要予測や保有水源の評価の問題点を指摘した専門家2人の意見書を新たに提出。国側は原判決が適正として棄却を求めていた。
 判決後の集会で、住民の岩下和雄さん(72)は「約50年間闘ってきた私たちに対し、判決(の読み上げ)はたった3秒間だった」と憤り、「古里を離れるつもりはない。上告し、事業の不当性をただしていく」と言葉に力を込めた。
 石木ダムを巡っては、住民らが県と同市に工事の差し止めを求めた訴訟も長崎地裁佐世保支部で係争中。3月24日に判決が言い渡される予定。

◎馬奈木昭雄・原告弁護団長の話
 国民の声に耳を傾ける裁判所の役割を放棄した不当判決。最高裁では必ず勝てると確信し、土地収用法の運用の仕方の違憲性などを訴える。

◎国土交通省九州地方整備局担当者の話
 国の主張が認められたものと理解している。住民側が上告し、最高裁で争うことになった場合も、関係機関と協議して適切に対応していく。

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