公的病院再編問題 黒字経営も“再編”の対象に 佐世保・北松中央病院 医師不足の課題懸念

次の中期計画策定に向け準備を進めている北松中央病院。厚労省から公立・公的病院の再編議論を求められる病院として公表されたことに反発が起きている=佐世保市江迎町

 佐世保市北部周辺の医療の中核を担う北松中央病院(江迎町)が、2020年度から3年間取り組む次の中期計画を策定する準備を進めている。05年度に地方独立行政法人化した後は黒字経営を続けているが、厚生労働省は全国の公的病院で再編・統合の議論が必要とする病院の一つに挙げた。病院側は「地域医療を支えている役割を理解していない」と反発。しかし周辺地域では医師の高齢化と人材不足が進む苦しい実情もある。

 佐世保市街地から車で北へ約30分。山あいを抜けると北松中央病院が見えてくる。北松の旧町のほか、平戸、松浦両市、北松佐々町からの患者が目立つ。
 識者でつくる病院の評価委員会は11月、次の中期計画の柱となる中期目標案を議論した。病院側は黒字経営が続き、利益余剰金は約7億2千万円に上ることを報告。県北の医療空白を埋め、救急を安定させる役割を担う姿勢を強調した。評価委は実績を評価し、中期目標案に問題はないと判断した。
 評価委では、厚労省から再編・統合の議論が必要な公的病院として名前を公表されたことについて「なぜ名前が挙がったのか」といった懸念や疑問が噴出した。県北では北松中央病院に加え、平戸市民病院、平戸市立生月病院が含まれた。
 佐世保市医療政策課は、北松中央病院が含まれた理由について、周辺病院との距離の近さなどがあると分析。「山あいが多く、アクセスしにくい県北地域での再編は現実的ではない。交通網が整った都市部と同じ感覚で判断していないか。どの病院と再編するべきかも示されていない」と困惑する。北松中央病院の東山康仁理事長は「地域住民を置き去りにしている」と不快感を示す。
 ただ、市北部周辺では医師の高齢化が深刻な状況にある。同課によると、3市1町でつくる「佐世保県北医療圏」のうち、平戸、松浦両市、佐々町の医師は、16年時点で60歳以上の割合が51.1%に達し、県内で最も高齢化が進む。将来的に周辺病院が人手不足に陥れば、北松中央病院が、離島の県上五島病院(新上五島町)のように地域医療を一手に引き受けざるを得ない事態も想定される。
 こうした状況を踏まえ、次の中期目標案には医師確保の必要性を明文化。3月までに具体的な対応などを記した中期計画を策定する。
 北松中央病院は医師を志す学生に修学資金を貸与し、同病院の常勤医となれば返還を全額免除する制度を導入している。田中明徳事務部長は「制度を活用するなどして若い医師を確保したい。周辺地域の将来を見据えた計画をまとめる」と話している。

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