セパ両リーグで走者を出しにくかった投手は誰? 投手指標から見るNO1投手は…

中日・大野雄大【写真:荒川祐史】

WHIPは1イニング当たり、どれくらい走者を出すか測る指標

 セイバーメトリクスの投手の指標である「WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)」。1イニング当たりに安打、四球で許した走者数の平均を現すものである。これが低いほど、走者を出しにくい投手ということになる。

 計算式は「(被安打+与四球)÷投球回数」で表され、死球を含まない点が、出塁率など従来の指標と異なっている。アメリカではWHIPは早くから認知され、MLBの公式サイトにも使用されている。

 今季、NPBで100イニング以上投げた投手のWHIPについてみてみよう。

○パ・リーグ
1 有原航平(日)0.92(164.1回111被安打40与四球)
2 山本由伸(オ)0.96(143回101被安打36与四球)
3 高橋礼(ソ)1.14(143回114被安打49与四球)
4 千賀滉大(ソ)1.16(180.1回134被安打75与四球)
5 山岡泰輔(オ)1.17(170回154被安打45与四球)
6 ニール(西)1.176(100.1回103被安打15与四球)
7 美馬学(楽)1.183(143.2回146被安打24与四球)
8 石橋良太(楽)1.19(127.1回116被安打35与四球)
9 二木康太(ロ)1.22(128.2回127被安打30与四球)
10 大竹耕太郎(ソ)1.24(106回111被安打20与四球)

 WHIPは1.00を下回ると優秀とされる。1位の有原は与四球は40でそれほど少なくはないが、被打率.191と100イニング以上投げた投手の中では最も優秀。安打をなかなか許さなかったことがWHIP1位につながった。

 オリックスの山本は快速球と高速カットボールが武器。被打率は有原に次ぐ.200だった。奪三振王のソフトバンク千賀は与四球もリーグ最多の75。WHIPは1.16と平凡な数字になっている。100イニング以上でWHIPが悪いのは西武の高橋光成の1.54。今季は10勝を挙げたが、たくさんの走者を出した。課題は多いといえるだろう。

セは大野雄、今永の左腕が上位、西や石川もまずまず

○セ・リーグ
1 大野雄大(中)0.98(177.2回132被安打43与四球)
2 今永昇太(De)1.08(170回128被安打56与四球)
3 西勇輝(神)1.13(172.1回159被安打36与四球)
4 石川雅規(ヤ)1.15(124.1回117被安打26与四球)
5 山口俊(巨)1.16(170回137被安打60与四球)
6 柳裕也(中)1.19(170.2回165被安打38与四球)
7 ジョンソン(広)1.21(156.2回132被安打58与四球)
8 大瀬良大地(広)1.22(173.1回176被安打35与四球)
9 菅野智之(巨)1.247(136.1回138被安打32与四球)
10 九里亜蓮(広)1.254(118回107被安打41与四球)

 1位と2位は左腕だった。中日の大野雄は最優秀防御率のタイトルを獲得し、被打率.206は100イニング以上投げた投手でリーグ1位。DeNA今永はリーグ2位の.210だった。

 3位の阪神、西は奪三振が少なく打たせて取るタイプの投手だが、与四球は少ない。4位のヤクルト石川も同じタイプだ。100イニング以上投げて、WHIPが悪かったのは阪神ガルシアで1.57。103.2回で123被安打と被安打が多い。

 WHIPは一時期MLBでも重視されたが、その後、セイバーメトリクスの研究者、ボロス・マクラッケンによって「被安打は投手の実力に関係がない」という有力な説が唱えられたこともあり、評価は限定的になっている。しかし「走者を出さない」ことは投手にとって重要なことであり、今も一定の意味があるといえるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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