議員と住民 対話カフェ 山北町議会が在り方を模索

カフェで町民(手前)と意見交換する町議=11月20日、山北町健康福祉センター

 地方議会の役割を再認識しようと、山北町議会(定数14)は、町民と直接対話する「おしゃべりカフェ」を始めた。議会改革の一環で8月から月1回のペースで開催、多い月には16人が参加している。背景にあるのは今春の町議選で顕在化した「議員のなり手不足」だ。議員定数をはじめとする議会の在り方を巡る議論に、民意をどう反映させていくか-。「内容改善しながら、議会への理解を深めるいい方向につなげたい」。町議会の模索が続いている。

 11月20日、山北駅前の複合施設・町健康福祉センター。施設内のカフェコーナーで行われた「おしゃべりカフェ」には、男性2人の町民が参加した。話題は、自身の仕事や共通の知人の消息、10月の台風被害などさまざま。向き合った計5人の町議は、メモを取ったり参加しやすいカフェのヒントを探ったりしながら、積極的に話を引き出した。

 町議会にあるのは、今年4月の町議選で直面した「議員のなり手不足」への危機感と、定数削減を拒み続けてきた“反省”だ。

 昨年9月の定例会本会議。人口減少や少子高齢化に伴う厳しい財政状況や、足柄上郡の他の4町の定数(大井町14、中井、松田、開成町12)などを踏まえ、一部議員が定数2減の条例改正案を提案した。しかし、賛成は4人にとどまり否決。同12月の定例会でも、町民が町議選の無投票回避とともに求めた定数2減の請願を不採択とした。

 定数削減を2度も“拒否”しながら、今年4月の町議選では定数を大きく割り込む可能性が浮上。現職7人が引退を決めた一方、新たな候補者が出る気配は告示直前までほとんどなかった。最終的に計15人が出馬して8年ぶりの選挙戦となったが、現職も町民に出馬を促す活動に追われるなど選挙活動に手が回らず、有権者には「これで本当に選挙戦なのか」という疑問が残った。

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 新人7人が加わった改選後の町議会は、議員のなり手不足が深刻化する原因を「議会と町民との距離が開きすぎている」と分析。反省を込め、他議会の先行例を参考に直接対話できる「おしゃべりカフェ」を始めた。府川輝夫議長は「半数が新人になり、新しいことを始めるにはいいタイミング」と強調する。

 毎月20日を開催日とし、奇数月は町の中心部にある同センター、偶数月は全町内から買い物客が集まるという小田原百貨店山北店(同町岸)で、これまで計4回開催。町商工会女性部や山北商店振興会の有志らとも意見交換会を開いた。

 町民の反応はおおむね好意的といい、20日のカフェに初めて参加した男性(59)は「雰囲気は悪くない。膝詰めで議員と話すのは親近感が違う」と感想を語った。

 「議員のなり手不足は、町民の『議会無用』の意識が根底にある」と府川議長。カフェでの会話を通して、町議側が町政課題などへの見識を高める一方、町民も議会の役割などを知る相互理解を目指す。新人議員にとっては資質向上に向けた実践の場にもなっているという。

 議員定数を巡り、町議会のあり方検討委員会が議論を進めている町議会。おおむね2年かけて方向性を出す予定で、定数維持を結論とした前回の検討委とは違い、今回は町民の意見を聞く場を設けるなど、町民に寄り添った町議会を目指す考えだ。

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