「ながら運転」厳罰化

 ちょっとユーモラスだが、きっと本音も込めたのだろう。歌人の故斎藤史(ふみ)さんに一首がある。〈携帯電話持たず終(おわ)らむ死んでからまで便利に呼び出されてたまるか〉。一切、携帯電話など持つまい、と▲そこまでの固い“決意”はなくとも、お気持ちは分かる。二十数年前、携帯電話が登場し、いつでも、どこでも通話が可能になった。職場からの急な連絡も例外ではなくて、その便利さがありがたく、同時にありがたくなかった覚えがある▲やがてスマートフォンが普及したが、やれることを挙げると切りがない。短文を交わす、動画を見る、漫画を読む、ゲームをする…。娯楽も詰まった「手放せないパートナー」と思う人は今や数知れまい▲そのパートナーを脇に待機させるべき時もある。車の運転中に操作をすれば、人命に危害を及ぼしかねない。スマホなどを使う「ながら運転」を厳罰化する改正法が、1日に施行された▲愛知県で3年前、スマホでゲームをしていた男の車に男の子がはねられ、亡くなった。新潟県では昨年、スマホで漫画を読みながら運転していた男が死亡事故を起こした。罰則強化も道理に違いない▲パートナーと密着するあまり、人の命の重さをつい忘れる。あってはならないことだろう。携帯、スマホとの間に置くべき「距離」も考えたい。(徹)

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