生物医学的知識が精神疾患の差別や偏見なくす 教育プログラム開発へ応用

小塩靖崇特任研究員(総合文化研究科)らは、精神疾患の生物医学的知識が、精神疾患のスティグマ(差別、偏見、誤解)の軽減に役立つことを解明した。教育プログラム開発などへの応用が期待される。成果は11月22日付の英科学誌『エピデミオロジー・アンド・サイカイアトリック・サイエンシズ』(電子版)に掲載された。

 

今まで行われてきた精神疾患のスティグマ軽減のための教育は「患者の多くは回復につながり得る」などの心理社会的内容が中心。一方「精神疾患は脳の疾患である」などの生物医学的知識はスティグマを増長させ得ると信じられてきたため、教育で扱うかは議論が続いていた。

 

今回の研究では、一般人179人を「生物医学的内容」と「心理社会的内容」の2グループに無作為に分け、10分間の講義を実施。講義前、講義直後、1カ月後、1年後の4時点で、精神疾患の適切な知識と、精神疾患を持つ人の行動などへの理解度などを検証することで、スティグマの程度を評価した。結果、両グループとも精神疾患の適切な知識は講義直後、1カ月後、1年後に向上。精神疾患を持つ人の行動などへの理解度は講義直後と1カ月後に改善が見られ、生物医学的知識のスティグマ軽減への有効性が示された。

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