四肢まひの18歳、囲碁名勝負 支援者ら入力装置開発

(左から)タブレット端末を操作する東海林さん、大盤解説も行った中川さん、対戦相手の佐野さん。東海林さんは左手のスティックでカーソルを動かし打つ場所を決め、右腕で棒スイッチに触れて確定させた=東京都大田区

 先天性四肢まひのため、手足や会話が不自由な神奈川県立鎌倉養護学校高等部3年の東海林晴也さん(18)=横浜市戸塚区=が1日、初の公開囲碁対局を行った。支援者が工夫した入力装置を活用し、一人でタブレット端末を操作。かすかに動く両腕で一手一手を入力し、アマ初段の大学生と激しい闘いを繰り広げた。惜しくも負けたが、東海林さんは満面の笑みを見せ、観客から盛んな拍手が送られた。

 対局は東京都大田区でプロ棋士も参加した囲碁イベントの一環。約30人の観客が見守る中、大盤解説も行われた。対局相手の千葉大医学部4年、佐野宙輝さん(21)は「すごい攻めで、弱点を見逃してくれない」と感嘆。対局はIT機器の有効性や障害児者の可能性を示した。

 東海林さんが囲碁を始めたのは高等部1年の時。端末の囲碁ソフトへの入力は、母の周子さん(41)が手の動きなどから意思を推測して操作した。すぐさま囲碁の面白さに引きつけられ、同区の囲碁の会にも通うようになった。

 そこで知り合ったのが、アマ8段の囲碁ボランティアで、IT機器に詳しい都立特別支援学校教諭の中川剛志さん(28)。今秋になって、最新機器を使い、東海林さんの状態に合った端末入力装置を考案した。かすかに動く両腕を活用し、左手でスティックを動かしカーソルを移動、右腕で棒スイッチに触れ確定する仕組み。装置は日本語入力にも活用できる。東海林さんは初めて1人で囲碁ソフトを使えるようになり、実力を付けていった。現在はアマ10級になり、公開対局が実現した。

 中川さんは「囲碁を通して、東海林さんの内面を周囲に伝えることができる。東海林さんの可能性に驚いた」と話す。周子さんも「端末操作では完全に私の手から離れました。囲碁を通して知人も増え、世界が広がりました」と喜んでいた。

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