W杯リーチ先発外し、ジョセフHC続投 藤井委員長が明かす舞台裏

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年末恒例の「2019 ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)が2日に発表され、年間大賞にラグビー日本代表がワールドカップ(W杯)日本大会のチームのスローガンに掲げた「ONE TEAM」が輝いた。国内を熱狂に包んだラグビーの日本大会閉幕から1カ月が経過。史上初の8強入りを達成した日本代表の藤井雄一郎強化委員長(50)が西日本スポーツの単独インタビューに応じた。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)の盟友として進言したアイルランド戦での「リーチ先発外し」の真相や、続投が決まったジョセフHCとの交渉の舞台裏、いまだ冷める気配のないラグビー熱を後押しに今後の日本ラグビー界が「ワンチーム」となって目指すべき姿などを語った。 (取材・構成=大窪正一)

■負けたら俺のせいに

-日本が有言実行の8強入りを果たしたW杯閉幕から1カ月が過ぎた。

「重圧は大きかった。史上初の決勝トーナメント進出というとんでもない自国開催のノルマがあったから。紙一重の戦いばかりだったが、全てがいい方向に転んだ」

-眠れない日々が続いたのでは。

「(決勝トーナメント進出が懸かった)スコットランド戦の前夜はさすがに眠れなかった。いろいろ考えた。台風で試合開催が危ぶまれるなどいろいろな要素も加わってきたので。選手には絶対に試合は行われると言い続けた。あるかないか分からないと言うと選手は集中できない」

-主将のリーチ(・マイケル)を先発から外して金星を挙げたアイルランド戦が大きなポイントになった。ジョセフHCから相談を持ち掛けられた「路上会談」でリーチの控えスタートを進言した。

「ロシア戦でのリーチのパフォーマンスが良くなかったので勝利を追求するなら外すべきだと考えた。ジェイミーの評価も同じだった。後押しが欲しかったんだと思う。リーチは大事なグラウンド以外のものも背負いすぎていた。自分の一番大事な仕事は何かに気付いてもらいたかった」

-リーチはチームの精神的支柱。結果次第では「ワンチーム」が空中分解するリスクもあった。

「リーチ以外の選手には『勝利のためにリーチは後半のインパクトプレーヤーとして使う』と言い続け、本人には『パフォーマンスが上がっていないから先発から外す』とジェイミーが伝えた。私からジェイミーには『負けたら俺のせいにしろ、俺と相談したから間違った。これからは自分だけで決断すると言え』と言った」

-発奮したようにリーチのパフォーマンスが飛躍的に上がった。

「荒療治だったが結果的に良かった。リーチが復活した」

■育成システムが必要

-本気の南アフリカには完敗だった。

「強かった。疲労もあり満身創痍(そうい)で心身ともに限界だった。そんなに甘くない。相手には2メートルの大型選手がごろごろいる。工夫だけではやれない。あの先に行くのは日本協会と一枚岩となった育成システムが必要になる。4強以上のチームは控えを含めた31人で戦える層の厚さがあった」

-敗退後、ジョセフHCはどう過ごしていたのか。

「ジェイミーの親族が来日していたこともあり、東京にいると気疲れするので宮崎に1週間ほどいた。私も2日間ほど合流した。『いい仕事はできた。チャプター1は終わり。これからがチャプター2やな』と2人でねぎらい合った」

-ジョセフHCにニュージーランド代表監督の可能性も浮上し、続投交渉は難航した。打開できたポイントは。

「実は、日本が敗退してすぐに(戦術面の)トニー・ブラウンコーチと水面下で交渉した。彼は家族を大切にする。好条件を提示した上で、『(その内容を)奥さんと話し合ってほしい』と頼んだ。それで(ブラウンコーチが続投を)OKしてくれた。彼を片腕として信頼しているジェイミーは間違いなく日本を選ぶ。2人はもともと日本を大切に考えていたし」

-強化委員長として今後の強化体制への青写真がある。

「準備しているプロ化の動きがどうなるかで大きく変わる。プロにならないと育成は難しいのが本音。プロになればユース組織もつくれる」

-帰国中のジョセフHCから受けた指示は。

「(福岡)堅樹を日本代表に戻せと…。なぜやめるんだ、まだできるだろうと言われている」

-来年7月のイングランド戦(4日・大分、11日・神戸)に向けては?

「次の招集は6月になる。スタート段階では現代表メンバーとそれほど変わらないかもしれない。ただ、4年後を見据えて、若い選手を入れたり、可能性のある新しい選手を試したり。居住期間をクリアした外国人選手次第で変わってくるだろうし。選手の見極めをしながら2年。残り2年で本格的強化に入り、仕上げるイメージ。トップリーグや、スーパーラグビー(SR)のサンウルブズなどで新たな選手の発掘に努めていくことになる」

-ゼネラルマネジャー(GM)を務めたサンウルブズの関わりは。

「要請は受けているが、少し考えさせてほしいと伝えている」

-ラグビー人気を維持、発展させていくには。

「まず代表が強くあり続けないといけない。そのために育成システムがいる。今回は勝てたが、スコットランドやアイルランドは素晴らしい育成システムがある。8強に入り続け、その上を目指すのは大変なこと。強化とともに、裾野を広げる普及活動や、さらなる認知度を上げる取り組みなどをそれぞれの専門がやり、日本協会を中心に『ワンチーム』となってチャレンジしていけば道は開ける」