『ゴーストマスター』 “壁ドン”映画の撮影現場で起きるホラー

(C)2019「ゴーストマスター」製作委員会

 『嘘を愛する女』『ブルーアワーにぶっ飛ばす』などを生んだ「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」で受賞した企画に基づく。監督は、アメリカ人の父を持ち、東京芸大で黒沢清に師事したヤング ポールで、これが長編デビュー作となる。

 舞台は、少女漫画を原作にした“壁ドン”映画の撮影現場。主人公は、B級ホラーを愛する気弱な助監督で、肌身離さず持ち歩いていた自作の脚本に、彼の鬱積した不満に呼び寄せられた悪霊が乗り移って…というバックステージもののホラー映画である。

 こういうのをカルト映画と呼ぶのだろう。テーマは、「映画愛」というより「ジャンル映画への偏愛」。ホラーを中心に過去作へのオマージュやパロディーが満載なのだ。だからツボにハマった人には気持ちいいし、元ネタ探しの面白さもある。しかも、不満が鬱積しているのは監督も同じのようで、日本の映画界やプロデューサーに対するブラックな皮肉も入っていて、批評性も感じられる。

 ただし、どうしても『カメラを止めるな!』の先例が頭をよぎる。あの映画が成功した要因の一つは、ジャンル映画を出発点にしながらも、カルトに陥ることなく普遍的な「映画愛」へと昇華できたことだろう。もちろん、“壁ドン”映画がターゲットをティーン女子に限定しているように、カルトに特化した映画があってもいい。だが本作を観て、「映画愛」と「ジャンル映画愛」は全くの別モノだと実感させられた。★★★☆☆(外山真也)

監督:ヤング ポール

出演:三浦貴大、成海璃子

12月6日(金)から全国順次公開

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