前十字靭帯損傷は手術後できるだけ早くリハビリ開始を【骨と筋肉の疑問】

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【骨と筋肉の疑問】#1

【Q】前十字靱帯は一度損傷したら元に戻らないというのは本当ですか? (スポーツ好きの34歳女性)

【A】靱帯損傷はバスケットボールやスキー、サッカー、野球、柔道など激しいスポーツで起きる障害とのイメージがありますが、日常生活でも起こり得ます。中高年や女性のなかには急に立ち上がったり、体をひねったりして靱帯損傷することがあるのです。

靱帯とは関節を構成している骨同士が離れないように働き、関節の動きを一定の方向に制限する役割を持つ結合組織を言います。靱帯損傷はその靱帯に外側から強い力がかかって一部または完全に切れて、関節の保持が損なわれる状態を言います。靱帯の一部が損傷しても関節にズレなど支障が生じていない状況は捻挫です。

靱帯損傷がよく起こるのは膝です。膝には主に前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯の4つがあります。前・後の十字靱帯は関節内で互いに交差していて大腿骨、脛骨、腓骨をつなぎ、膝の前後のゆれやひねりなどを制御しています。内・外の側副靱帯は膝の内と外にあって膝の左右の安定を保っています。

ラグビーやスキーなどで膝を外側にひねったときに起きるのが内側側副靱帯損傷です。外側側副靱帯損傷は柔道で転倒するなど、膝の内側から強い衝撃を受けたときに生じます。前十字靱帯損傷はジャンプの着地時や急な方向転換などで膝に負担がかかって受傷することが多く、後十字靱帯損傷はラグビーやサッカー、交通事故など膝をしたたかに打ったときに起こりやすいとされています。

前十字靱帯損傷の症状は、急性期では膝関節に血がたまって腫れ、動かすと強い痛みがあります。放置すると痛みは気にならなくなりますが、靱帯は治ることがないため膝はぐらぐらのままになります。さらに時間が経つと半月板損傷、軟骨損傷といった合併症が起こり、歩行することすら困難になる確率が高まります。

治療は単独損傷であれば装具固定の後、関節可動域を広げる訓練と筋力トレーニングを行います。ただし、前十字靱帯は再生能力が極めて乏しく、基本的に元には戻りません。そのため、治療の基本は手術です。その後はできるだけ早めにリハビリを行い、関節の可動域の回復と大腿骨を中心にした筋力回復を行います。

前十字靱帯損傷は手術後、日常生活は問題なく過ごせますが、スポーツに復帰するのは難しく、相当な努力が必要といわれます。しかし、まったくできなくなるわけではありません。適切な手術とリハビリで競技復帰は可能です。

現にプロ野球の小久保裕紀選手、スケートの高橋大輔選手、サッカーの斎藤学選手らは前十字靱帯損傷後、現役復帰して活躍されました。

(水井睦/みずい整形外科院長)