東京→仙台まで軽油何リッターで行けるのか?!|VWゴルフ TDI エコランチャレンジ

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

熟成に熟成を重ねた現行型ゴルフ7

1975年に初代モデルが登場したVW ゴルフ。世界の自動車メーカーのコンパクトハッチバックのお手本と呼ばれる存在だ。日本での累計販売台数は約85万台を記録、日本人にとっても「親しみのある輸入車」の代表である。

すでに本国では8代目(ゴルフ8)が発表済みだが、日本への導入はしばらく先と言われている。個人的には新型の進化を期待する一方で、熟成を重ねた現行モデルをあえて選ぶ……と言う考え方もアリだ。

最後の最後にやってきた本命ディーゼルモデル?!

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

そんなゴルフ7に追加されたのがディーゼルモデル「TDI」だ。実は日本では3代目(ゴルフ3)以来21年ぶりの復活である。

日本では一時期壊滅状態だった乗用ディーゼルだが、2006年にメルセデス・ベンツ「E320CDI」の日本導入を皮切りに復活。更にマツダの「スカイアクティブD」の登場で一気に拡大、現在は多くの海外メーカーから最新ディーゼルモデルが導入されている状況だ。もちろん、VWもその流れに乗るはずだったが、2015年のディーゼルゲート問題から導入が遅れたのも事実である。しかし、2018年のパサート以降、主要モデルにTDIが追加設定されてきたが、ついに本命のゴルフに……と言うわけである。

すでにMoTAでも通常のインプレッションは掲載済みだが、今回はディーゼルの旨みがより出てくる「長距離ツーリング」だ。目的地はVWジャパンのある品川(東京)から約400km、「杜の都」と呼ばれる仙台(宮城)だ。ただ、単純に走ればOKなのではなくミッションが与えられており、往路は同日に出発する他のメディアとの「エコランバトル」。復路は自由取材・撮影というスケジュールだ。

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

交通の流れを乱さずにエコランしてみる

バトルと言われたら本気で臨む所ではあるものの、今回はあえて自らに課題を与えてみた。それは「交通の流れを乱さず」である。のっけから言い訳がましいと感じるかもしれないが、一般道を使う以上は……ね。

ドライブモードは「エコ」、エアコンは当然「OFF」でスタート。エコランのポイントはまずコース設定。ちなみに仙台までのルートは大きく分けると、路面の起伏が平均的な東北道と水戸までは比較的フラットだがそこから起伏が厳しい常磐道の2つだが、我々は常磐道ルートを選択。更に東北道に乗るまでに燃費が悪化する一般道の走行を最小限にするために出発前に、副編集長Kと共に入念にルート設定を行なうと、品川~五反田~山手通り~首都高速(山手トンネル)~美女木JCT~外環がベストルートと判断。途中、美女木JCTの信号渋滞に少し巻き込まれたが、それ以外は無駄なストップ&ゴーなしで東北道に。

2リッターディーゼルターボは穏やかな特性

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

日本に導入されるVWのディーゼルモデル(TDI)はすべて2Lディーゼルターボだが、エンジンの特性は各々のモデルのキャラクターに合わせて最適化されている。そのなかでゴルフは150ps/340Nmと最も穏やかなスペックを有する。トランスミッションは湿式の7速DSGとの組み合わせだ。

ディーゼルと言うと実用域のトルクがキモとなるが、TDIは他のディーゼルと比べるとマイルドな特性で1800rpmを境に力強さが増すタイプだ。5代目(ゴルフ5)から採用のDSGは進化・熟成で低速域のマナーは年々良くなっているが、ガソリン車よりもレスポンスが穏やかなディーゼルとの相性は非常に良い。ただ、1速はやや引っ張り気味なのが気になるのでマニュアルモードでカバー。ちなみにアイドリングストップ機能も付いているが、信号待ち程度の時間で再始動してしまうのは仕様? それともクルマの個体差?

短い距離で色々試した結果、どうやら60~70km/hくらいが燃費が一番良い領域だと解り、それに伴って燃費計の数値はグイグイとアップ。東北道の浦和料金所を超えるころには20km/Lオーバーを指していた。

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

普通車とトラックの速度差問題を実感

ここから己との戦いである。高速道路の最低速度は50km/hなので、60~70km/hで走ると言う案もあったが、今回は80~90km/h……つまりトラックと同じペースで走ることにした。「交通の流れを乱さない」と共に、ネットでも話題になる「普通車とトラックの速度差問題」を身を持って体感してみようと。

85km/h前後で7速に入り、その時のエンジン回転数は1200~1300rpm。この領域が燃費がいいゾーンらしく、瞬間燃費計は25~30km/Lの間をキープ。エコモードだとアクセルオフでコースティング機能(惰性の状態)が働くので、速度調整も楽だ。

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート
VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

軽快な動きのガソリン車と比べるとTDIのフットワークはドッシリとした落ち着きの良さと安定感があるものの、ゴルフ7特有のの滑らかでシットリした足さばきではなく、バネ下が落ちつかないドタバタした乗り味と、思ったよりビシッと走らない直進安定性が気になる……。筆者の気のせいかと思いきや、助手席の副編集長Kも同じ印象、なぜかしら?

燃費向上には空力も大きく影響する。なんせ、「空気抵抗は速度の2乗に比例」である。そこで前方を走るトラックに空気の壁を壊してもらい空気抵抗を軽減させる「スリップストリーム」も活用。ただ、あまり近すぎると煽り運転と勘違いされてしまうので、あくまでも適切な距離を維持しながら……だ。ただ、それでもクルマがスッと吸い寄せられる感覚はあったので、効果はあったと思う。

後続車両を邪魔しない“気遣い”が必要です

80~90km/hでの巡航はそれほどストレスがないものの、やはり追い越し時は普段以上に後続車に気を使う。自車の速度は一定のまま後続車両を邪魔しない追い越しをするには、常に先を読んだ運転が要求される。このちょっとした“気遣い”こそが、円滑な交通の流れのポイントだと改めて実感。

ちなみに巡航時は不満がないものの、再加速時などではいとも簡単にシフトダウンしてしまうのはちょっと残念な所である。個人的には多彩なパワートレインを用意するゴルフだからこそ、TDIはよりディーゼルらしさを活かした粘り強さを期待してしまうのだ。

と言いながら、仙台宮城インターに着くころには燃費は26.5~27km/Lをマーク。ここからゴールとなる市内までは下り坂なので燃料カットを最大限に使って燃費を稼いだものの市内で若干燃費を落とし、最終的には26.9km/Lとなった。

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート
VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

夕食時に成績発表。トップは29.5km/Lと我々は大きく引き離されてしまったが、走り方を聞くと「60~70km/h」と聞いて納得……。

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

タイヤの空気圧チェックはお忘れなく!

翌日の朝一番で仙台城付近で撮影を行なった後に、福島で途中下車をして副編集長Kが見つけた名物「円盤餃子」を食べていざ東京に。往路で気になっていたゴルフ7らしからぬ乗り味だが、高速に乗る前に空気圧をチェックすると規定よりも低めであることが発覚。適正値(240kPa)に合わせて走り始めると、「あれっ、全然違う!?」。いつもの滑らかでシットリした足さばきと抜群の直進安定性に戻った。特に気温差が激しくなる時期、空気圧チェックは念入りに……だ。

VW ゴルフTDI ロングドライブレポート
VW ゴルフTDI ロングドライブレポート

復路はエコランを意識せず交通の流れに合わせての走行だったが、やはり100km/h前後が燃費と走りのバランスがいいと思う。ちなみに100km/hのエンジン1500rpm前後で、その領域だとアクセルを踏み込むとDSGの制御でターボラグも上手くカバーしてくれるのでドライバビリティもすこぶる高い。

ちなみに復路の燃費は20.7km/Lをマーク。WLTPは18.9km/L(高速道路モードは22.2km/L)を考えると達成率も高い。

ハイパワー版のGTDも欲しい!

結論、VWの昨今の電動化の流れを考えるとゴルフ8の日本仕様にTDIが設定されるかどうかは解らない。そう考えると、今熟成のゴルフ7とTDIの組み合わせを選ぶのは十分アリだと思う。個人的には最後の最後に表れた「ベストゴルフ7」と言ってもいい一台である。ただ欲を言うと、ドイツ本国にラインナップされる184ps/380N・mで最高速230km/h、0→100km/h加速7.5秒のスポーツディーゼルを搭載したゴルフGTIのディーゼル版「GTD」ならもっと嬉しかったかも!?

[筆者:山本シンヤ]

© 株式会社MOTA