桜を見る会、安倍政権のごまかし見破る六つの注意点

野党を批判している場合でない理由

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「桜を見る会」で手を振る安倍首相(中央)=4月、東京・新宿御苑

 「桜を見る会」とその前夜祭が問われている。問題だらけだ。なのに、安倍晋三首相や菅義偉官房長官らは、ごまかして逃げようとしている。ごまかしを許さないために野党が物証をつかもうとすると、「いつまでも、くだらないことを」と外野から非難の声が上がる。

 しかし、ことは公職選挙法と政治資金規正法の違反に首相が問われているという問題だ。さらに、要人や功績・功労のあった人々を招待する「桜を見る会」に、反社会的勢力の関係者が参加していた疑いも出ているが、それも名簿がないからと検証できていない。

 「いつまでも、くだらないことを」と言う人は、非難の矛先を野党に向けようと躍起になっている。だが、さっさと問題を収束させたいのであれば、ホテルに明細書を出させろ、首相は招待者名簿や受付票を探すよう指示しろ、野党の質疑にきちんと答えよ、と言うべきだ。そう言わずにあえて問題の焦点をぼかそうとする人の意見に、惑わされるべきでない。(法政大学教授、国会パブリックビューイング代表=上西充子)

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 森友問題、加計問題、統計不正等々、首相官邸の不適切な関与が疑われるさまざまな問題がこれまでにあったが、どれも官邸が関与したとの決定的な証拠がなく、官僚が勝手に忖度したかのように処理されてきた。

 けれども、前夜祭の夕食会は安倍晋三後援会が主催したものだというし、「桜を見る会」の主催者は首相だ。自分は知らなかったと言い逃れることはできないし、ブログや写真、証言など証拠はそろってきている。

 問題は、わかりやすい。ホテルニューオータニの立食パーティーが会費5000円というのはあり得るのか、唐揚げを増やせばできるのかとか、ホテル発行の明細書はなぜないのかとか、後援会関係者はなぜ「桜を見る会」の開門前にセキュリティーチェックもなく入場し先に記念撮影できたのかとか、来年の招待者が決まる前になぜ今年の招待者名簿は廃棄したとされているのかなど、常識に照らして「おかしいだろ、それ」と判断できることが多い。

 そこがこれまでの問題と違う。けれど、ごまかしの手法はこれまでと似通っている。だから、不都合な事実を前にしたときに首相や閣僚らがどうごまかそうとしているのか、この機会にしっかり把握しておこう。

 そうすれば、「あの時もそうだった」と思い起こすことができるし、これからも「またその手法を繰り返す気か」と気付くことができる。

■注意すべきポイント①【等】

 官僚の文書では「等」に注意せよ、と言われる。今回も「等」が大活躍した。「桜を見る会」の開催要領では、招待範囲として皇族や各国大使、衆参両院議長、閣僚、国会議員、都道府県知事などのほか、「その他各界の代表者等」とあるのだが、安倍事務所が募集した後援会関係者などは、その「等」に大勢、含まれていた。

 11月8日の参院予算委員会での田村智子議員(共産党)の質疑によれば、2014年の参加者数は1万3700人。19年には1万8200人に膨れ上がり、支出額は3005万円から5520万円に大幅に増加した。これは予算の3倍を超えた。

 官房長官は、招待者の基準の見直し検討を表明した11月12日の記者会見で、「等」にはどのような人が含まれるのかと問われ、

 「各界においてさまざまな功績・功労のあった方々などを幅広く招待できるよう『等』を付けているものであり、特定の分野やカテゴリーを想定しているものではないというふうに承知をしております」

と答えた。

 この時点で、官房長官は首相などによる推薦枠の存在を認めていなかったが、同月20日の衆院内閣委員会で19年の招待者には、昭恵夫人の推薦を含む首相側の推薦が約1000人、麻生太郎副総理兼財務相、官房長官、官房副長官からの推薦が計約1000人、自民党側からの推薦が約6000人に上っていたと答弁するに至った。

安倍首相名の2015年の「桜を見る会」の案内状など

■注意すべきポイント②【のべつ幕なし呼べる仕組みになっておりません】

 萩生田光一文部科学相は14年4月18日のブログに、「今年は平素ご面倒をかけている常任幹事会の皆様をご夫婦でお招きしました」と記していたことを今年11月8日の田村議員の質疑で問われ、

 「自分の知り合いの方を、のべつ幕なし呼べるという仕組みに、なっておりません」

と答弁した。

 しかし田村議員は、知り合いを「のべつ幕なし」呼べたかどうかを問うていたのではない。何らかの功績・功労によって推薦されたのかと問うたわけだ。

 なのに「のべつ幕なし」呼べる仕組みにはなっていない、と論点をずらして答えた。「朝ごはんは食べたのか」と問われ、「ご飯(白米)は食べておりません(パンは食べたが、黙っておきます)」と答える論点ずらしの「ご飯論法」と同じだ。こういう言い方をするときには、何かごまかしておきたい不都合な事情があるのだなと注意が必要だ。

■注意すべきポイント③【取りまとめ等には関与していない】

 11月8日の田村議員の質疑に、安倍首相は、

 「私は、主催者としてのあいさつや招待者の接遇は行うのでありますが、招待者の取りまとめ等には関与していないわけであります」

と答弁していた。

 この「取りまとめ」という表現が要注意だ。招待者の人選には関与していないように聞こえるが、推薦や口添えなど、広い意味での人選に関わる行為の全体ではなく、その中で「取りまとめ」という限定した行為だけが言及されている。

 似たようなごまかし方に、「指示はしていない」がある。首相が「指示」していなくても、ある行為を行うようにと強く匂わせ、人を介して意向を伝え、官僚に忖度させることはできる。「指示はしていない」と否定することにより、自らの関与は何もないかのように装うことができるが、それは関与の範囲を「指示」という言葉であえて狭くしているためだ。

 前述の通り、11月20日の衆院内閣委員会で首相らの推薦枠の実態が明らかになり、首相も同じ日の参院本会議で、自身も推薦に関わっていたことを認めた。しかし同月8日の答弁が虚偽だったのではないかと問われると、

 「招待者の最終的な取りまとめには一切関与していない」

と強調。「取りまとめ等」としていた自身の発言を「最終的な取りまとめ」へと都合よく変え、虚偽答弁には当たらないと言い張った。

■注意すべきポイント④【個人情報を含んだ膨大な量の文書、遅滞なく廃棄】

 「桜を見る会」の招待者名簿は、電子データも含め、廃棄したとされている。11月8日の田村議員の質疑に対して、内閣府の大塚幸寛官房長はその理由をこう答えていた。

 「毎回、桜を見る会の終了をもって使用目的を終えるということもございますし、個人情報を含んだ膨大な量の文書を適切に管理する必要が生じることもございまして、従前から一連の書類につきましては、保存期間1年未満の文書として、終了後、遅滞なく廃棄する取り扱いとしているところでございます」

 その後に判明したところによると、名簿がシュレッダーにかけられたとされるのは、5月9日午後。その日に共産党の宮本徹衆院議員が「桜を見る会」に関して資料請求を行った直後のことだった。タイミングが良すぎる。

 他省庁では、推薦者名簿は5年や10年などの保存期間が定められている。省庁など23機関が招待者として推薦した3954人分の名簿は、11月22日に多くの個人情報を黒塗りにした形で開示されている。「個人情報を含んだ膨大な量の文書」だから「遅滞なく廃棄」したという説明は、あまりに不自然だ。

 11月21日の参院内閣委員会で田村議員が指摘しているように、少なくとも翌年の「桜を見る会」の招待者を決めるまで名簿を保存していなければ、行事を円滑に継続することは不可能だ。不都合な事実が表に出るのを防ぐために、首相枠や長官枠、議員枠など政治関係の推薦名簿だけが、ないものとされている疑いが強い。

参院内閣委で共産党の田村智子氏(左端)の質問を聞く菅官房長官(右端)ら=11月21日

■注意すべきポイント⑤【復元できないと聞いている】

 「個人情報を含んだ膨大な量の文書」だと言っても、電子データならかさばることもない。しかし、電子データも消去したとされている。

 とはいえ、電子データは、完全に消去できるものなのか。11月28日の記者会見で官房長官は電子データを復元する考えはないのかと問われ、

 「削減したデータについては復元をすることはできないと聞いている」

と答えた。復元できないのは技術的にできないのかルール上できないのかと改めて問われると、

 「具体的に、技術的にそうなのか、ルール的にそうなのか、そうしたことは承知していない。ただ、そういう形で、ルールに基づいて、政府として、正式に決めて対応している」

と答えた。

 この会見を受けて共同通信はデジタル向けニュースで「招待者名簿のデータは復元できないと菅氏」と速報。そののち見出しを「菅氏『復元できないと聞いている』」とする記事を配信した。

 「復元できない」と「復元できないと聞いている」では、意味は違う。「聞いている」なら、報告した者の事実誤認だったと後から誰かに責任転嫁できる余地を残している。ここは正確に報じなければ、政府のごまかしに報道が加担することになる。

 毎日新聞は同日夕、統合デジタル取材センターの電子版記事において、主な一問一答を正確に文字起こしして示し、「なぜ『データの復元できない』? 菅氏、会見で終始あいまいな回答 桜を見る会一問一答」と見出しを付けた。政府のごまかしには加担しないぞ、という姿勢がこの記事からはうかがえる。

■注意すべきポイント⑥【国会から求められれば】

 「桜を見る会」や前夜祭について疑惑が深まる中、11月15日昼に首相官邸で総理番の記者に国会での説明の意思を問われた首相は、

 「国会については、国会がお決めになることですが、政府としては、国会から求められれば、出て行って説明するのは、当然のことでございます」

と答えた。

 これは国会での質疑に応じる構えがあるかのように聞こえる発言だが、実はそうではない。

 まず、「ぜひ国会で説明責任を果たしたい」とは発言していないことに注意が必要だ。積極的に国会で説明したいという意思は表明せずに、「国会から求められれば」という言い方をしている。

 ここで私たちが知っておかなければいけないのは、国会がこの問題に対する審議を行い、首相に出席を求めるのは、与野党の合意が整った場合だけである、という点だ。「国会から求められれば」という安倍首相の発言は、与党は国会審議の求めに応じないことを見越した発言なのだ。さらに、「私としては」ではなく「政府としては」と発言しているところにも、首相の逃げの姿勢が感じられる。

「桜を見る会」を巡り、記者団の質問に答える安倍首相=11月15日夕、首相官邸

 臨時国会の会期は12月9日まで。与党は「桜を見る会」に関する国会での追及が続くことを回避するために、会期の延長には否定的であると伝えられている。「国会から求められれば」という首相発言は、国会での説明からは逃げ切れるだろう、という見込みのもとでの発言と見るべきだ。

 他にも、「セキュリティーに関することであり、お答えを差し控えたい」とか、「いずれにいたしましても」とか、ごまかしの手法はいろいろあるが、ここまでにしておこう。

 決定的な物証が出てこなくても、これだけごまかしが横行しているという事実そのものが、首相や関係閣僚らが説明責任を果たしていない、果たそうとしていないことを明白に表している。

 その事実を前に、私たちはどうすべきか。大人の責任を、後世に向けた責任を、どうすれば果たせるか。「野党はだらしない」とか言っている場合ではないのだ。