フランス名匠監督オリヴィエ・アサイヤス、映画製作に充実感

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イベントに出席したフランスの名匠オリヴィエ・アサイヤス監督

 『夏時間の庭』などで知られるフランスの名匠オリヴィエ・アサイヤス監督が2日、アンスティチュ・フランセ日本で行われた映画『冬時間のパリ』(12月20日公開)のトークイベント付き試写会に出席。「爆音上映」の仕掛け人としても知られる映画評論家の樋口泰人との対話を通じて撮影を振り返った。イベントには、アンスティチュ・フランセ日本の映画プログラム主任・坂本安美も出席した。

アサイヤス監督と樋口泰人が対談!トークイベントの様子【画像】

 『冬時間のパリ』は、ジュリエット・ビノシュギヨーム・カネヴァンサン・マケーニュらフランスを代表する俳優たちが出演するラブストーリー。エリック・ロメール監督の『木と市長と文化会館/または七つの偶然』(1992)に着想を得て、迷える二組の夫婦の姿を活写した。

 アサイヤス監督は、対談について「樋口さんと自分の作品について語り合うということは本当に幸せなんです。語り合う度に自分の刺激となって、これからやることの扉を開けてくれるような、自分の糧になるひと時なんです」と笑顔。樋口は、映画について「観ていて、若くて才能のある日本の監督が手掛けたような群像劇に思えてきて。この新しさはなんだろうと思いました」と語ると、「オリヴィエさんが長編を撮り始めてから30年くらい経ちますが、この映画はオリヴィエさんの作品の中で初めてのコメディーではないでしょうか」と指摘。アサイヤス監督は「最初からコメディーにしようとは思っていなかった。うまく説明できないですが、自分が年を重ねるごとに、作品のトーンが軽やかに、明るいもの、愉快なものに導かれているような気がするんです」と返答した。

 さらに、「自分の意識としては、自分が手掛けた全ての作品が同時に存在するような気持ちになっています」と補足するアサイヤス監督。「ある意味、この作品はわたしの処女作にもつながっている。30年近く経っているにも関わらず、隔たりを感じない。毎回、新しく作る映画が、自分の過去作の理解を深める補完的な存在になっていると感じます」と充実感をにじませた。

樋口泰人(左)とオリヴィエ・アサイヤス監督(右)

 本作で樋口が驚いたのは、海辺を舞台としたクライマックスシーン。それを聞いたアサイヤス監督は、「あのシーンは奇跡的に撮れたシーンだったんです。あの場面では太陽の光が溢れていますよね」と笑顔でコメントすると、「でも撮影したのは12月の終わり近くで、当時の天気が最悪だったんです。これはもう撮れないんじゃないか。これが撮れなければ語りたいストーリーが台無しになってしまうと思いました」と撮影秘話を告白。幸い、撮影現場に奇跡的に太陽が差し込んできたそうで、「これはすぐに撮らないといけないと思い、急いで撮りました。俳優たちの演技もバッチリ。あのシーンは太陽と彼らの演技に救われたんです」と振り返った。

 監督の映画製作におけるフットワークの軽さに驚いた様子の樋口。アサイヤス監督は「映画製作を続けてきて、必ずしも教養だったりスキルだったりというものが得られたわけではないですが、あえて得られたものを挙げるとするならば、自分の本能に基づいて臨機応変に行動できる無意識、反射神経を持ち得たということかもしれません」としみじみ語った。(取材・文:壬生智裕)