政治参加は投票だけじゃない。話題のニュースを知るところから始めませんか?【英語民間試験の導入延期】

私たちNO YOUTH NO JAPANは、参院選でInstagramを中心にU30世代に投票に行くことを呼びかけた活動であり、U30世代の投票率UPを目指して始めたグループです。

NO YOUTH NO JAPANでは、毎月21日を「国民する日』としていろいろな活動を行なっています。「国民する」とは、「選挙に行くだけじゃなくて、自分たちが選んだ人たちがやっている政治について日常から知ったり、考えたり、対話したりすることを日常的に行う」ということです。毎月21日は、わたしたちの生きたい社会のために、いま社会や政治で話題のニュースの事を知って・考えて・発信してみませんか?

「知る」では、いま話題になっているニュースについて議論を簡単に紹介します。「考える」では、NO YOUTH NO JAPANの視点、U30世代独自の切り口からニュースについて深掘りします。そして、「発信する」では記事を読んでいただいている皆さんの意見をアンケートを通じて発信してください!記事を読んで終わりではなく、自分のスタンスを持って、さらにそれを発信する場になればいいなと思っています。

2019年11月のテーマは『英語民間試験の導入延期』。来年4月から導入予定だった民間試験が延期された背景にはどういった行動があったのか、わたしたちと一緒に見ていきましょう。

<この記事が問いかけたいこと>
・私たちの周りにある様々なルールや決まりは、本当にプラスになっているだろうか?
・理不尽だと思うことに声をあげた人たちがいます。今回は誰が何に注目し、どんな声をあげたのだろうか?
・あなたは、声をあげる人たちについてどう思いますか?

「知る」:民間試験導入は入試改革への1歩?

そもそもなぜ今の大学入試を変えようとしているのでしょうか?
今の日本の英語教育は、読む・聞くと言ったインプットの力に比べ、書く・話すと言ったアウトプットの力を付けるのが弱い、と言われています。ですが今後ますますグローバル化が進む社会に対応するため、英語教育・大学入試は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を重視していくという方針を文科省が示しました。そして、既に4技能を測る試験として実施されていた英語の資格試験を今のセンター試験の代わりに使う事が2017年に公表されました。2018年3月にはTOEICや英検など8種類の民間試験が採用され、受験年度の4〜12月に受けた2回までの試験結果が使われるという制度の大枠も決定し、2020年度より導入される予定でした。
ところが、「異なる複数の試験を比較できるのか?」「試験はいつ、どこで実施するのか?」「各大学は試験結果をどのように用いるのか?」など、多くの問題点が露呈。今年7月にはTOEICが撤退を表明し、混乱が広がりました。こうした情報の教育現場への共有も十分とはいえなかったため、情報収集と伝達は学校・教師側の負担に。
問題点が明るみに出るにつれ、受験生など多くの当事者が抗議行動に出ました。民間試験を入試に使うための共通IDの発行が近づくに連れ抗議は過熱し、そこに『身の丈』発言もあって問題意識は一気に拡散。まさに共通ID発行の申し込み開始当日の11月1日、制度導入が2024年度まで延期されると発表されました。

抗議行動に出た人たちの問題意識は、今の状態で民間試験を用いる事で様々な格差による不公平が助長されてしまうという点にもありました。
教育の機会均等を定めた教育基本法第3条の通り、人種や性別は勿論、経済格差や社会的地位による差別は認められていないはず。しかし、英語民間試験は安くても1回約6000円(or5000円以上)と金銭的な負担がかかるため、受験前に何度も練習できる学生と、一度の受験をするのもやっとの学生との間に経済格差という不公平を産んでしまいます。更に試験会場までの交通費や宿泊費は自腹のため、地方や離島の受験生は受験料以外に数万円の出費が必要になります。

「考える」— 大臣の発言だけではない。誰のどんな行動が制度を延期に追い込んだ?

多くの問題を抱えていたにも関わらず、つい最近まで国や文科省は来年4月から試験制度を導入するつもりでいました。この方針をひっくり返し、導入を延期させた背景に何があったのでしょうか。
『考える』では、それぞれの立場の人がどんな行動によって政府に働きかけ、その方針を覆したのかを追っていきます。

1声をあげた

受験に直接関わる受験生や学校の先生などは、直接NOを訴えかけました。文科省前でのデモや国会内での直談判といったダイレクトな行動まで起こり、当事者や現場の声が軽んじられた議論はおかしいという声も多く上がっていました。
全国高等学校長協会もこれらの声を受け、不安解消を求める要望書を7月に提出。問題解消が見込めなくなった9月には、制度の延期と見直しを求める要望書を改めて提出していました。

2影響を及ぼした

大学や民間試験会社という組織レベルでの意思決定は、個人とは違う角度からこの問題に影響を及ぼしました。
北海道大学や東北大学らは民間試験を入試に活用しないと早々に発信し、東京大学も民間試験の成績を必須とする方針を撤回。特に東北大学は、英語民間試験を含む大学入学共通テストについて独自の調査を行い、多くの高校が公平性や合理性に疑念を抱いているという現場の声を下に試験の活用を控えると決定していました。
また、民間試験としての必要要件を全てクリアしたと判断され、2020年度からの採用が決まっていたTOEICが、7月に撤退するという“TOEICショック”も大きな影響を及ぼしました。同試験を実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会によれば、実施運営や結果提供が複雑となり『責任をもって各種対応を進めていくことが困難であると判断』したとのことです。

3問題意識と共感を広めた

民間試験の問題は『身の丈』発言から始まったわけではなく、あの発言は世論を加熱させた引き金に過ぎません。制度を批判する声はそれ以前から続いており、そうした訴えかけによって現場から世間へと広がっていきました。
今年6月には、大学教授らのグループが民間試験の中止を求める請願書を8000以上の署名と共に提出しています。国会会期の関係などで請願は審査されませんでしたが、問題点を明確にして国会での再考を促す動きはずっと前からあったのです。このような地道な動きが続き、盛り上がってきたからこそ、『身の丈』発言が引き金となりマスメディアや世論の注目も集まり、制度の延期につながったといえるのではないでしょうか。
マスメディアには、私たち一人一人よりも遥かに大きな影響力・発信力があります。ですが、その大きな山を動かしたのは、私たち一人一人にしかできなかった小さな声・小さな行動の積み重ねだったとも言えるはずです。

ここまで記事を読んで、あなたが感じたことや考えたことを教えてください!

※回答により個人が特定されることはありません。フォームの回答期限は、記事の掲載から1ヶ月です。

「発信する」— 問題はまだ終わっていない。これからのこと、あなたはどう考える?

とはいえ、民間試験はあくまで『延期』。2024年度からは、民間試験を利用した新たな大学入試が始まる予定になっています。今回浮かび上がった課題がそれまでに解決されるのか、引き続き私たちは注意してみていく必要があるでしょう。
更に、そもそも来年度から導入される『大学入学共通テスト』の記述式問題について、例えば誰が、どう採点するか。更には、大目標である『教育制度の改善』にどう繋げていくか。大学入試・そして教育に関わる問題は山積みです。
それらの変革は決して不要なものじゃない。けど、その変革はちゃんとプラスに働くのか。教育現場に関わる誰かにとって理不尽な決まり事が強行される事はないか。
そんな社会の在り方を『仕方ない』で認めさせない姿勢が、私たち一人一人には求められているのだと思います。
また、『民間試験に向け準備してきた学校の校長先生』や『歳の離れた兄弟姉妹のいる両親』など、英語民間試験に関わる当事者でも様々な立場があります。あなたとは異なる立場からの見方を考える事は、あなたの考えを更に深めるヒントにもなるでしょう。

わたしたちの記事では今後も、毎回のテーマをより深めたり、記事で取り上げられなかった様々な視点を扱う為の工夫をする事で、『話題のニュースはなんとなく分かっても、誰かに発信できる立派な意見は持ってない』を、『知って・考えて・発信する』に繋げられるようにしていきます。皆さんの考え・意見を募集するフォームも設置するので、あなたの意見を私たちにぜひ教えてください!

参考:
文部科学省「高大接続改革」
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1397733.htm
IIBC「『大学入試英語成績提供システム』へのTOEIC Test参加申し込み取り下げのお知らせ」(https://www.iibc-global.org/iibc/press/2019/p119.html

NO YOUTH NO JAPANでは今後も、政治参加をカルチャーにしていく為に様々な活動を続けていきます。私たちの活動に加わりたい方、私たちとともに活動してくださる地方自治体・団体・企業の方はぜひご連絡ください!

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