増える外国人 対応充実図る佐世保市

佐世保市の一部の窓口で使われている音声翻訳システムが入ったタブレット=佐世保市役所

 佐世保市は窓口の多言語化など、市内に住む外国人への対応を充実させている。一部の窓口では11月から、行政用語に特化した音声翻訳システムと小型の翻訳機の活用を試験的に開始。だが音声翻訳が役立つ度合いには差がみられる。日本語教育の専門家などは簡易な表現を使う「やさしい日本語」の活用の必要性を訴える。
 窓口の多言語化は、外国人の利用が多い総合窓口、子ども支援課、市民税課の3カ所で試行している。英語やミャンマー語など8言語に対応する音声翻訳システムが入ったタブレットを共有。一般の小型の翻訳機も使う。
 背景には外国人在住者の増加がある。市国際政策課によると9月末現在、44カ国の1940人(米軍人、軍属、家族の約7400人を除く)が生活。前年同期より116人増えた。外国人材の受け入れ拡大に伴い多国籍化が進む可能性を見据え、同課は「米軍関係者とは違い、市内に頼る場所がない外国人も出るはず。手を差し伸べる必要がある」とする。
 各窓口ではこれまで、英語ができる職員が対応したり、スマートフォンの翻訳アプリを利用したりしていた。
 「あるのとないのでは違う」。児童手当や保育園に関する手続きを担う子ども支援課では、福祉の専門用語が多く家庭の細かな状況を尋ねる場合もあるため、相手の話す内容が分かる安心感が増した。一方、総合窓口を管轄する戸籍住民窓口課では、各手続きで用いる単語やフレーズがある程度固定化されている。「これまでも何とかやってきた。万能ではないと理解して使う必要がある」とする。
 外国人対応として「やさしい日本語」を活用する自治体もある。160以上の国・地域の人が住む横浜市では、押印を「はんこに紙を押すこと」とするなど、市役所で使う約600語をやさしい日本語に言い換えたリストを専門家や外国人と作成。ロールプレイを交えた職員研修も企画し、活用を促している。
 日本語教育が専門で、市民と外国人がやさしい日本語で交流する会を大分県で運営する長崎国際大の山内美穂准教授は、母国語での対応にはコスト的に限界があることを指摘。「やさしい日本語の活用も進めることで外国人は『ここで生活をしていい』と思える。存在の肯定にもなる」と話した。
 市は本年度中に在住外国人を対象にアンケートをする予定。生活状況や市に求めることなどを把握していく。

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