ゲノム編集研究、広島大が攻勢 論文数ランキングで世界2位と5位

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「急速に進む編集技術を広め、国内全体で研究をもっと活性化させたい」と話す山本教授

 広島大で遺伝子を効率よく改変するゲノム編集の研究が進んでいる。10月に発表された米科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」の論文数ランキングでは、同大の研究者が世界2位と5位にランクされた。「学内外で共同研究を進め、日本全体のレベルを上げたい」と医療や産業での応用を目指し、研究、開発に力を入れている。

 同誌「遺伝子編集における共同研究ネットワーク」で2000〜18年の論文数ランキングが公表され、同大大学院統合生命科学研究科の山本卓教授(54)が91本で2位。5位は78本で同研究科の佐久間哲史講師(35)がランクされた。

 最多は世界トップ研究者といわれる米ブロード研究所のフェン・チャン博士の105本。3位はノーベル賞の有力候補とされる米カリフォルニア大バークリー校のジェニファー・ダウドナ教授。広島大研究者のレベルの高さを示している。

 山本教授の論文で注目されているものの一つが筋ジストロフィーの治療法研究だ。京都大のiPS細胞研究所(京都市)と共同で患者から作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて、病気の原因となった遺伝子をゲノム編集で切断して正常に修復する。

 他にも、芽に毒のないジャガイモの開発研究や、がん細胞の増殖を抑える技術開発などがある。論文の大半は佐久間講師との共同発表となっている。「ゲノム編集技術は微生物や動植物での利用、遺伝性疾患の治療など医学での応用にもつながり、ニーズは際限なく広がる」と山本教授。現在も国内外で100件以上の共同研究を進めている。

 広島大がゲノム編集で注目されるようになったのは11年。山本教授らの研究チームは世界有数の高さのレベルとされ、国内で唯一、ゲノム編集に必要な人工DNA切断酵素を作るシステムを開発。翌12年には、国内の研究者に声を掛けて共同研究体(コンソーシアム)を設立し、編集技術の研究会や講習会を広島大で開くなど「日本ゲノム編集学会」設立の原動力にもなった。

 一方で「米中は資金も人材も豊富。技術開発で日本は遅れているのが実情だ」と、佐久間講師らは危機感を抱く。16年からは同大を中心に10研究機関・23企業による産学共同研究が本格的にスタート。今年に入って研究拠点の整備や人材育成も進める。

 さらに8月には大学発ベンチャーを設立し、実用化への動きを活発化させる。山本教授は「トライアンドエラーを重ねて精度を上げる必要がある。成果を上げ、日本のレベルの底上げを目指す」と力を込める。

 <クリック>ゲノム編集 DNAの特定の部分を探し出し、その場所を狙って切ることができる技術。主に3種類が使われており、2012年に開発された「クリスパー・キャス9(ナイン)」は簡単で使いやすく安価なため急速に世界中へ広がった。農作物の品種改良のほか、医学での研究開発が進む。受精卵や精子、卵子の改変は世代を超えて影響する恐れがあり、慎重論も根強い。