サインツ、最終ラップの争いが映されず不満「多くのファンが数多くのバトルを見逃している」

 マクラーレンF1のカルロス・サインツは、F1アブダビGPの決勝レースで壮絶な戦いを見せた。ドライバーズランキング6位をつかみ取ったのは、ルノーのニコ・ヒュルケンベルグを追い抜いて10位入賞を決めた最終ラップでの見事な走りだったが、その場面がテレビで中継されることはなかった。

 2019年に、マクラーレンはサインツが安定した戦いをしてくれたおかげで、コンストラクターズ選手権で久々の上位復活(4位)を果たすことができた。F1パドックのほぼ全員が彼の成績を称賛する一方、評論家たちは、彼がレースでの一貫性やテクニックをシーズンを通して保っていたことを特に強調した。

 しかし、コース上でそういった才能や負けん気の強さを発揮しているにもかかわらず、F1中団グループのトップドライバーとしてのサインツ自身や、ひいては中団グループ全般の様子がテレビに映し出される機会は、なぜか非常に限られている。

 実際に、F1パドックではしばしば、今シーズンのサインツは見事な戦いを続けているはずなのに、テレビ画面では一度も見たことがない、などと冗談などを言われてきた。

 アブダビGP決勝が行われた12月1日のヤス・マリーナ・サーキットでも状況はおなじだった。最終戦では年間ドライバーズランキングにおける、熾烈な6位争いが予想されるというニュースは事前に十分広まっていたにもかかわらず、サインツが最終ラップでの巧みな走りからその座をつかんだ瞬間は、見事なまでに中継には映っていなかった。

「そのことについてあまり話すつもりはないよ」と、戸惑いを隠せないサインツは語った。

「でも、おそらく多くの人が、ランキング6位の座をかけた中団でのバトルが行われることをレースウイークの期間中に話をしていたはずだと思う」

「しかもその争いが最終ラップの、最終コーナーにまで持ち越されていたというのに、テレビで放送しなかったんだ!」

「ランキング6位をめぐるバトルの行方について、みんながこれほど盛り上がっていたのに、終わってみたらテレビでは放送されていなかった。不思議なことだよ」

 これより少し前、第15戦シンガポールGPでも、やはりサインツを含む4人による中団でのスリリングな争いがテレビの中継に取り上げられなかった。このときはマクラーレンが、テレビでの露出時間の短さに関する質問をF1に提出している。

「この件について、我々はF1と複数回の話し合いを行っている」と、マクラーレンのスポンサーシップマネージャーを務めるダニエル・マキューアンは語った。

「これはドライバーたちや、チームのパートナーたちにとって重要な問題だ。我々は問題を改善し、メディアでの認知度を高めるために、F1との作業を続けている」

 サインツは、中団グループの全ドライバーがテレビ露出の少なさには不満を持っていると代弁したうえで、ハースF1のロマン・グロージャンからはテレビ画面を分割してコース上の複数個所で起きているバトルを同時に見せればよい、とする提案が出ていることも明かした。

「このことについては、僕はずっと批判的に発言をしてきたし、中団のドライバーたちもみんな不満を抱えていると思う」とサインツ。

「多くのファンが、先頭集団ではなく中団グループで戦っているドライバーたちが繰り広げている、数多くのバトルを見逃していることになるんだ」

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