<隠れた名盤> 南壽あさ子『Neutral』 壮大なオーケストラの海外編と、キュートな歌声が映える日本編

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南壽あさ子『Neutral』

 繊細な歌声が人気の女性シンガーソングライター南壽(なす)あさ子の約2年ぶりとなるアルバム。本作はラファ・サーディナのプロデュースによる海外録音の5曲と、伝説ギタリストである鈴木茂プロデュースによる日本録音6曲からなる2部構成で、どちらも個性的で良い。

 前半の海外編は、自由と不自由の間を生きようとする『BIRD SONG』や、都会で疲れた人々を癒すようにピアノで弾き語る『星の瞳』など、自然の景色が浮かぶ楽曲が多い。特に、『すみれになって』は、万物が生まれてからいずれ自然に還る様子を描いているが、婉曲的な歌詞と、柔らかな歌声、そして終盤に向け壮大になるオーケストラによる演出が見事で、何度も聴きたくなる。

 後半の日本編は、シティ・ポップ路線全開で、キュートな歌声が映える。特に、『鉄塔』は、明るく楽しいメルヘンチックな楽曲で、まさに「みんなのうた」らしい出来だ。また、『魔法の庭』が、初期のTULIPやユーミンの世界を想起させるのは、アレンジの効果に加え、“魔法”という言葉の魔法だろうか。こうした作り方からも、先人への敬意を感じさせる。

 ラストはピアノだけで歌う『永遠の少女』。全体を総括したような穏やかなバラードで、“未完成でも歩んでいこう”という歌声にホッとする。本作を聴けば、力まず、へそを曲げず、物事に取り組みたいと思うはず。

(ヤマハミュージックコミュニケーションズ・通常盤 3182円+税)=臼井孝