<ブレーク盤> ASCA『百歌繚乱』 言葉に説得力があり、ドラマティック

ASCA『百歌繚乱』

 96年愛知県生まれの女性歌手による1stアルバム。全13曲中6曲にアニメやゲーム系のタイアップがついていることもあり、戦闘シーンにマッチするようなマイナー調のアッパーチューンが多く、低音から高音の歌声によりメッセージが強く響く。2年前に発表された『KOE』の安定ぶりはデビュー作とは思えないほどだ。

 また、配信でヒットした『RESISTER』では、「運命に抗ってゆけ」という言葉に説得力があり、より過酷な状況を歌った『セルフロンティア』では男勝りなワイルドな歌唱で乗り越えるようでいっそうドラマティックだ。

 特に、そういった声質ゆえにAyasa(バイオリン)や分島花音(チェロ)が演奏する弦楽器との相性の良さも大きな強みだ。後者の『偽物の恋にさようならwith分島花音』では、女性の方から強い言葉で不誠実な恋人を振り払っていく楽曲で、アニソンファン以外も幅広く共感できることだろう。

 ラストは、本人が作詞を手がけたバラード『このメロディに乗せて』。アコギとピアノをバックに、夢を追って上京してきた「僕」が「君」によって支えられている心情がひしひしと伝わって、もっといろんな曲を聴いてみたいと思った(初回盤BDには、18年のLIVE映像も収録されており、その力強さを堪能できる)。本作から、文章とはまた別に、音楽に乗せてこそ伝わる言葉を強く実感するはず。

(ソニー・CD+BD 初回盤A 4000円+税)=臼井孝

© 一般社団法人共同通信社