五輪卓球シングルス争いは丹羽優勢か 水谷はグランドファイナルに全てを懸ける

写真:T2ダイヤモンドでの水谷隼(写真左)、丹羽孝希(写真右)/撮影:ラリーズ編集部

東京五輪の代表枠を争う戦いも佳境を迎えている。

卓球の個人戦に出場できる選手は各国2名。女子は伊藤美誠(スターツ)が早々に選考基準を満たし、残り1枠を平野美宇(日本生命)と石川佳純(全農)が僅差で争うデットヒートを繰り広げている。

写真:すでに代表選考基準を満たした張本智和(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

男子も同様に、先日の男子W杯での準優勝など成長著しい張本智和(木下グループ)が真っ先に五輪選考基準を満たし、残った1枠は丹羽孝希(スヴェンソン)と水谷隼(木下グループ)の一騎打ちとなっている。

五輪の個人戦出場選手の選出基準は日本卓球連盟が規定しており「2020年1月時点の世界ランキング上位2名」とされている。

丹羽が大きく有利? 水谷はグランドファイナルに全てを懸ける

写真:T2ダイヤモンドでの丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:ラリーズ編集部

現時点での2020年1月時点での有効な世界ランキングポイントを比較すると、丹羽:9420pt 水谷:8925ptとなっている。約500ptの差をつけ丹羽が優勢の状況だ

逆転を狙う水谷は年内の残りの国際大会でよりポイントを上積みすることができるかどうかに代表の座が懸かっている。

五輪代表争いに関わる国際大会は残り2つ、12月4日からカナダで開催されるノースアメリカンオープンと、12月12日から中国で開催されるグランドファイナルだ。

ノースアメリカンオープンには丹羽がエントリーしていたものの、先日のワールドカップでベスト8入りしポイントを上積みに成功したため出場を取りやめた。水谷も先日出場キャンセルしたため、この大会は代表争いには関与しない。

逆に、グランドファイナルには水谷が出場を予定しており、丹羽は参加予定選手に棄権が発生した場合に繰り上がりで出場可能となる状況だ。

残すはグランドファイナル 両者の突破条件を確認

写真:T2ダイヤモンドでの水谷隼(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

卓球の世界ランキングは、直近1年以内に出場した大会のうち獲得ポイントが大きい上位8大会のポイント合計(一部大会を除く)によって決定される。

そのため、丹羽や水谷が更にポイントを積み上げるためには、一定以上の結果を残さなければならない。

これを踏まえて、両者の代表権獲得条件を確認してみよう。

まずは追う水谷だが、グランドファイナルで現在の丹羽のポイントを上回ることが最低条件となる。そのためには、ベスト4以上が必須だ。ベスト4に入れば水谷のポイントは9685ptとなり丹羽の9420ptを上回る。

対する丹羽は、グランドファイナルの出場権を持っていないため基本的には水谷の結果待ちとなる。だが、グランドファイナルを1人でも棄権する選手が出た場合、リザーブ(控え)選手の1番手である丹羽が繰り上げ出場することになる。

棄権が出るかどうかは不明だが、中国香港の黄鎮廷(ウォンチュンティン)が先日のT2ダイヤモンドで足を負傷。直後のTリーグのベンチ入りを取りやめるなど、怪我の状態によっては丹羽の繰り上げ出場もありえる状況となっている。

写真:T2ダイヤモンドで負傷した黄鎮廷(中国香港)/撮影:ラリーズ編集部

①丹羽がグランドファイナルに繰り上げ出場しない場合

丹羽のポイント加算は発生しないため、前述の通り水谷の突破条件はグランドファイナルでのベスト4となる。

②丹羽がグランドファイナルに繰り上げ出場する場合

丹羽がグランドファイナルに出場すると、初戦で敗退してもポイント加算が発生する。初戦で敗退したとしても、丹羽のポイントは9690ptに達するのだ。

これは水谷がベスト4入りして到達する9685ptを上回る。この場合、水谷は丹羽の結果に関わらず最低でも準優勝以上が必要となる

さらにグランドファイナルは中国選手をはじめトップ選手が集まるワールドツアー最高峰の試合となっている。この現状を鑑みると、丹羽にとってかなり有利な状況といえるだろう。

代表の座の行方は

写真:水谷はT2ダイヤモンドでオフチャロフ(ドイツ)を下し実力を示した/撮影:ラリーズ編集部

11月のT2ダイヤモンドの試合後に、五輪個人戦メンバー入りについて水谷は「家族やファンの皆さんもシングルスでの出場をずっと応援してくださっている。自分はもちろん(グランドファイナルで)ベストを尽くす」と今後の戦いに向けて前向きな姿勢を見せた。水谷は昨年のグランドファイナルではベスト4に勝ち残っており、自らの手で五輪代表の最後の1枠を掴み取るチャンスは残っている。

東京五輪を最後に日本代表から退くことを示唆している水谷。彼の日本代表としての勇姿を五輪の舞台で見ることはできるだろうか。

無論、丹羽や張本に期待する声もあり、この代表争いの熾烈さは、日本卓球界全体がレベルアップしてきていることの裏返しでもある

文:石丸眼鏡

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