偽「神戸ビーフ」海外で急速拡大 出荷実績ない販売サイトは100以上

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厳しい規格を満たす枝肉だけに押される「神戸ビーフの証(あかし)」=神戸市長田区苅藻通7、市中央卸売市場西部市場

 日本を代表する高級和牛ブランド・神戸ビーフの偽物が海外で急速に出回っている。インターネット上で「神戸ビーフ」をかたる海外業者のサイトは100以上。神戸の業界団体が海外に「モニター員」を置くなど対策に乗り出したが、偽装は広がるばかりで危機感を募らせている。(山路 進)

 「TROPICAL KOBE BEEF(トロピカルコウベビーフ)」「Kobe WORLD MEATS(コウベワールドミーツ)」-。

 スペインの精肉店、レストランとみられるサイトには、それぞれ神戸ビーフを思わせるブランド名が記されていた。しかし、神戸ビーフと但馬牛(ぎゅう)を認定する神戸肉流通推進協議会(神戸市西区)によると、これらの店に神戸ビーフを出荷した実績はないという。

 同協議会によると、こうした国外のサイトは100件を超える。谷元哲則事務局長(58)は「海外には多くの偽物が出回っており、ブランドを維持するために早く何とかしたい」と訴える。

 同協議会は、神戸ビーフの指定登録店制度を国内だけでなく、2012年から海外にも広げた。海外の登録数は年々増え、今年7月末時点で37カ国・地域の卸・小売り、飲食業者の計200に上る。

 輸出が始まった12年からは、海外でのブランド周知や管理に協力する「海外モニター員」を任命。現在、香港やモナコなどの業者ら6人が活動する。今年2月に発効した日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)では、相互に農産品ブランドを守る地理的表示(GI)が適用される。神戸ビーフなどのブランドは、EU域内でも同協議会に独占使用が認められる。

 神戸・三宮周辺でも近年、「神戸ビーフ」の看板を掲げる未登録のレストランが急増しているという。同協議会には、味などから偽装を疑う利用客の通報が届き、当該店への確認調査を進めている。

 さらに今年10月、同協議会など業界団体は偽装防止の新システムを稼働させた。神戸ビーフに認定された全ての肉片を5年間保管し、偽装が疑われた場合は、DNA型を鑑定できる体制を整えた。

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■人気沸騰で偽装対策急務、英百貨店が現場視察も

 偽物が国内外で横行する神戸ビーフ。背景には人気の沸騰があり、今年2月に発効した日EUの経済連携協定(EPA)では相互に保護されるブランドとなった。その価値を理解しようと、英国の高級百貨店の担当者らが今秋、初めて兵庫県内の現場を視察した。

 世界各国に顧客を持つドイツの食肉卸「アルバース」共同代表のフランク・アルバースさん(45)と、英ロンドンの高級デパート「ハロッズ」で食品の品質管理を統括するエリー・ハーフォードさん(30)。両社ともEUで輸入が始まった2014年から神戸ビーフを扱う。

 牛舎に立ち入るには、ヒトを介した肉用牛への伝染病感染を予防するため、日本に入国してから1週間以上の間隔が必要だ。そのため、海外からの肉用牛の現場視察は珍しい。

 2人は9月、神戸ビーフのもとになる但馬牛(うし)を繁殖・肥育する田中畜産(兵庫県丹波篠山市)と盛本牧場(同県佐用町)、今年7月に近畿初のEU輸出の処理施設となった「和牛マスター食肉センター」(同県姫路市)を視察した。

 田中畜産では、1頭当たりの牛舎の広さや掃除の頻度、飲料水の水源などを質問。田中久工(きゅうこう)代表(44)は「愛情を込めて育てている現状を伝えられてよかった」と話す。

 同食肉センターでは、迅速に処理して牛にストレスを与えない様子を確認。盛本牧場では子牛や母牛の飼育の様子、使用ワクチンにも関心を示した。2人は「世界一の牛肉は生産現場も素晴らしい」とうなずいた。

 案内したエスフーズ(同県西宮市)の山路良平海外事業部長(41)は「オーストラリアなどで生産される『WAGYU(ワギュウ)』に混じり、偽物も出回る。欧州でしっかり本物を伝えてほしい」と話す。アルバースさんは海外モニター員の一人。偽物を扱う海外サイトの存在を知らされ、「ブランドを毀損(きそん)する恐れがある。帰国したら早速調べたい」と応じた。(山路 進)