首相答弁にほころび、モリカケより泥沼化

検証・桜を見る会と夕食会(中)

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竹田昌弘

共同通信編集委員(憲法・司法・事件)

竹田昌弘

共同通信編集委員(憲法・司法・事件)

 1961年富山県生まれ。毎日新聞から共同通信の記者に転じ、宇都宮支局や編集局社会部に在籍。大阪社会部次長、編集局社会部次長、司法キャップなどを経て現職。共同通信社の「事件報道のガイドライン」や事業継続計画(BCP)の策定も担当した。著書に「知る、考える裁判員制度」、共編著に「憲法ルネサンス」など。

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 預託商法の「ジャパンライフ」元会長は安倍晋三首相の推薦枠だったのかなど、新たな問題も次々に浮上する「桜を見る会」。首相は12月2日の参院本会議で、12日ぶりに国会答弁に立ち、従来の主張や政府の見解を繰り返した。確かな根拠に基づく説得力のある説明は依然としてなく、主張や見解には、ほころびも目立つ。参院本会議での答弁を中心に、桜を見る会の検証を続ける。(共同通信編集委員=竹田昌弘)

安倍晋三事務所が今年2月、地元支援者に送付した「『桜を見る会』のご案内」

 ■招待状届かない可能性、案内文に記載なし

 まず首相は参院本会議で、桜を見る会の招待者について「幅広く希望者を募り推薦を行っていた。私自身も事務所から相談を受ければ、意見を言うこともあった。実際の事務所での推薦作業の詳細は承知していない。私の事務所に申し込めば、必ず招待状が届くというものではない」と答弁した。

 ただ安倍晋三事務所が今年2月、地元の支援者に出した「『桜を見る会』のご案内」には、次のように書かれている。 

 「謹啓、時下ますますご清栄のことお喜び申し上げます。さて、本年も下記のとおり総理主催の『桜を見る会』が開催されますので、ご案内申し上げます。なお、ご出席をご希望される方は、2月20日までに別紙申込書に必要事項をご記入の上、安倍事務所または、担当秘書までご連絡くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。内閣府の取りまとめになりますので、締切(原文ママ)後の追加申込(同)はできませんので、ご了承ください」 

 本文の下には、桜を見る会の開催日時、開催場所、主催=内閣総理大臣(内閣府)と表記=と「あべ晋三後援会主催 前日夕食会(会費制)」の開催日時、開催場所が書かれている。この案内文の内容では、申し込んでも招待状が届かないケースがあるとは思えない。注意を促しているのは、締め切り後の追加申し込みはできないことだけだ。 

 もしかすると、支援者が案内文に従い、別紙申込書に必要事項を記入し、2月20日までに、安倍事務所または担当秘書に連絡すると、招待状が届かない場合があると伝えられるのだろうか。それでは支援者に失礼ではないか。首相の答弁が事実ならば、確かな根拠を示して説明してほしい。 

■検証に必要な名簿、ガイドラインでは1年以上保存

参院本会議で12日ぶりの国会答弁に立った安倍晋三首相=12月2日

 次に招待者名簿の問題。首相は参院本会議で、これまでの政府の説明と同じように「会の終了をもって使用目的を終えることに加え、全て保存すれば、個人情報を含んだ膨大な文書を適切に管理する必要が生じること等から、内閣府において保存期間1年未満の文書として、会の終了後、遅滞なく廃棄している」と述べた。 

 安倍政権は、森友学園に国有地を格安で売却した際の交渉記録や南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸上自衛隊の日報について「保存期間1年未満で廃棄済み」として説明を拒み、批判を浴びたことから、2017年12月に「行政文書の管理に関するガイドライン」を改正し、「意思決定過程や事務および事業の実績の合理的な跡付けや検証に必要となる行政文書」は原則として1年以上の保存期間を定めることになった。検証に必要な招待者名簿は、保存期間1年以上にしなければならない行政文書ではないのか。 

 首相は桜を見る会について「全般的な見直しを行っていく」と参院本会議でも繰り返し述べたが、肝心の招待者名簿がなければ、会の在り方が検証できない。検証もせずに見直しはできないのではないか。また開催要領では招待者計約1万人で、本年度予算は1766万円だったのに、約1万5千人が招待され、同伴者を含めて1万8千を超える人が訪れ、支出が5518万円に上ったことについて、会計検査院は名簿もなしにどうやって検査するのだろうか。招待者が1・5倍、支出は3倍になった原因を探るには、招待者が開催要領通りかどうかから名簿で調べるしかないのではないか。

桜を見る会で招待者らと話す安倍晋三首相=4月13日、東京・新宿御苑

■同じ人招待しないためには名簿でチェック 

 さらに例えば、菅義偉官房長官の11月21日午前の定例記者会見などでは、政府は招待者の推薦について「幅広く、いろいろな方を招待するため、同じ方は推薦しないことが配慮事項の一つとなっている」と説明している。同じ人を推薦、招待しないためには、招待者を最終的に取りまとめる内閣府と内閣官房では、前年はもちろん、数年分の招待者名簿を保存し、チェックしなければならない。招待者名簿は、実は長年保存されてきたのではないか。 

ジャパンライフの山口隆祥元会長

 首相は参院本会議で、ジャパンライフの山口隆祥(たかよし)元会長が首相の推薦枠で招待され、しかも招待状が印刷されたチラシが顧客の勧誘に利用された疑いを追及されると「個人の招待者やその推薦元は個人情報であり、従来から回答を差し控えている」として、元会長の推薦、招待については、事実かどうか答えなかった。 

 確かに招待者名簿には、個人情報が掲載されているが、桜を見る会は「首相が各界で功績、功労のあった人たちを招き、日頃の苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事」(5月13日の衆院決算行政監視委員会での菅長官答弁など)であり、公費が使われることも考えれば、氏名と肩書は公表されてしかるべきものではないのか。 

 天皇、皇后両陛下が毎年春と秋に主催する園遊会の招待者は、各界の功労者を含め、桜を見る会の開催要領に書かれている招待者とほとんど同じ人たちだが、毎回名簿は公表され、新聞にも氏名と肩書が掲載される。宮内庁によると、園遊会の招待者名簿は保存期間30年という。なぜ政府は桜を見る会の招待者名簿を公表せず、保存期間1年未満として検証も許さないのか。公表すると、首相による会の私物化が白日の下にさらされるのを恐れているだろうか。 

昨年11月9日に行われた天皇、皇后両陛下(当時)主催の秋の園遊会=東京・赤坂御苑

 ジャパンライフがチラシに使った元会長への招待状(15年)には「60」の数字が振られていた。招待区分を説明した政府の文書によれば、これは「首相、官房長官等」の推薦枠を意味しているが、首相は参院本会議で「番号は招待状の発送を効率的に行うために便宜的に付している。会の終了をもって使用目的を終えることから、内閣府において、現時点でこれらに関する情報は保有していないと報告を受けている」として、こちらも事実かどうか答えなかった。逃げてごまかせばごまかすほど、疑惑は深まるのではないか。

 ■衆院議員の資料要求ないがしろ

 一方、宮本徹衆院議員(共産)が5月9日の昼すぎ、内閣府と内閣官房に桜を見る会の招待者名簿を質問の資料として提出するよう求めたのに対し、内閣府が同日午後1時20分~2時45分、大型シュレッダーで招待者名簿を細断した問題では、首相は「4月22日にシュレッダーの空き状況や担当している障害者雇用の短時間勤務者の勤務時間等と調整し、5月9日に招待者名簿の廃棄を予約した」と詳細に答弁し、資料要求を受けて廃棄したとの指摘を否定した。

招待者名簿の廃棄に使ったという大型シュレッダーを視察する総理主催「桜を見る会」追及本 部の野党議員ら=11月26日、内閣府(追及本部提供)

  しかし、国民の代表である衆院議員から資料要求があったのだから、内閣府と内閣官房はいったん細断の予約をキャンセルし、提出の可否、程度などを直ちに検討するのが、本来の国会と政府の在り方ではないか。内閣府は11月26日、野党の追及本部で「担当の職員は廃棄の時点で資料要求のことは知らなかった」と釈明したが、衆院議員の資料要求を軽んじているのではないか。 

定例の記者会見で招待者名簿のバックアップについて話す菅義偉官房長官=12月4日午前、首相官邸

 この問題では、12月4日午前の定例記者会見で、菅官房長官が5月21日の衆院財務金融委員会で、宮本氏の質問に対し、内閣府の井野靖久官房長(当時)が桜を見る会に関する資料は破棄したと答弁した当時、招待者名簿のバックアップデータは残っていたことを明らかにした。宮本氏に名簿を提出することは可能だったことになり、やはり衆院議員の資料要求をないがしろにしていると言われても仕方ない。菅官房長官はバックアップデータについて、開示請求の対象になる「行政文書ではない」との見解を示したが、名簿の原本やデータが廃棄された後は、バックアップデータが行政文書となるのではないか。

 また首相の「担当している障害者雇用の短時間勤務者の勤務時間等と調整し」との答弁に対しては、重い身体障害がある、れいわ新選組の舩後靖彦参院議員が「職員の属性は資料破棄の根本問題とは関係ない。職員の弱い立場を利用したとも受け止められる内容と感じる。残念に思う」と述べている。

■総裁選の昨年、自民京都府議・滋賀県議を全員招待

 一方、京都新聞の11月30日付朝刊によると、自民党総裁選が9月にあった昨年の桜を見る会では、自民党所属の京都府議と滋賀県議全員に招待状が届いた。例年は府県連の幹事長ら一部に限られていたという。「総裁選で安倍さんが比較的弱い地方の支持を得るため、京滋を含む全国の都道府県議を招待したのだろう。自民党という一政党の選挙のために税金を使うのはあり得ない」などとする、上久保誠人・立命館大教授(現代日本政治論)のコメントを掲載している。石破氏の支持者を除き、自民党の都道府県議が桜を見る会で一堂に会していた可能性が出てきた。 

愛知県西尾市内にあるジャパンライフ販売代理店を家宅捜索し、押収物を運び出す捜査員=4月25日

 桜を見る会の問題は、宮本氏が5月に取り上げた際、首相が安倍政権になってから招待者や支出が右上がりに増えたことについて、反省を表明し、来年以降の見直しを約束すれば、当時は夕食会や昭恵夫人が招待者を推薦していたことなどは報道されておらず、それで終わったかもしれない。 

 ところが、森友・加計学園(モリカケ)問題のときと同じように、資料が廃棄され、首相や菅官房長官、担当の官僚らは説明を拒んだり、説明しても確かな根拠に基づいていなかったりしているので、問題はどんどん大きくなった。ついには、警察が家宅捜索するなどして捜査を進めているジャパンライフまで出てきた。まさに泥沼化し、行政の私物化が分かりやすいことなどから、批判の声はモリカケを上回る勢いだ。首相官邸の前で抗議活動も相次いでいる。(下)では、首相の後援会が主催した桜を見る会前日の夕食会を中心に検証する。(続く)

桜を見る会を巡り、首相官邸前で抗議の横断幕を掲げる人たち=11月28日夜