早期復旧策を提言 台風被害の軍艦島 専門家が講演

 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つ、長崎市の端島(軍艦島)の保全と活用を考える講演会が4日、長崎市内で開かれ、専門家が台風被害からの早期復旧策や保存整備の進め方を提言した。

 軍艦島は9月の台風17号で通路や桟橋の手すりなどが損壊し、復旧工事のため最長で来年3月まで観光客の上陸禁止が続く見通し。市は現時点の観光消費損失額が約4億6千万円と見込んでいる。

 元島民で、元清水建設建築部長の中村陽一氏は、保存整備などの工事の際、軍艦島で過去に使用していた「デリック」と呼ばれる荷揚げ用の重機を用いれば台船やクレーン船などを使う必要がなく、コストを大幅に削減できると提案。「市や上陸クルーズ船会社の損害は甚大だ。なぜもっと早く復旧できないのか。市は世界遺産に対する使命感がないのではないか」と苦言を呈した。

 産業革命遺産の世界遺産登録に尽力した元内閣官房参与の加藤康子氏は「軍艦島は長崎市だけの宝ではなく、人類の宝だ。次世代に継承できるよう努力を」と呼び掛けた。長崎大名誉教授の後藤惠之輔氏は、国内最古の鉄筋コンクリート高層アパートとされ、倒壊が危ぶまれている1916年建築の「30号棟」について、国際コンペを開き世界中から保存のアイデアを募るよう訴えた。

 講演会は軍艦島研究同好会が主催。約160人が参加した。

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