日米貿易協定 競争必至 長崎県内畜産農家「世界に売り込む体制を」  

 日米貿易協定の来年1月発効が決まった4日、長崎県内の畜産農家からは「長崎ブランドを世界に売り込む体制づくりが必要」と対抗策を国などに求める声が上がった。消費者の間では高くても国産肉を支持する意見と安い米国産を歓迎する声の両方が聞かれた。

 米国産の牛豚肉などにかかる関税が環太平洋連携協定(TPP)と同じ水準まで一気に下がる。安い米国産の流入で消費者は恩恵を受けるが、長崎県内農家は競争が必至だ。

 競争力強化を課題に挙げるのは雲仙市千々石町で黒毛和牛約300頭を肥育する平野幸一さん(56)。「輸出に対応した加工場が県内になく、他県に後れを取っている。行政と事業者、農家が一体となって長崎ブランドを世界に売り込む体制をつくってほしい」と求めた。

 2017年の農業産出額によると、長崎県の肉用牛は全国7位の241億円で、県内では米やミカンを抑えて最も高い。壱岐市郷ノ浦町で和牛600頭を育てる野元勝博さん(59)は「価格がどう変動するのか先が見えない」と気をもむ。

 国産肉を扱う長崎市築町の肉屋ワタナベ商店代表、渡部政則さん(54)は「安くて品質が良い米国産があれば、今後、仕入れを増やすことを検討するかもしれない」と言う。

 長崎市の主婦、釜崎綾香さん(25)は「子どもがいて食費がかかるので、少しでも安い方が助かる」と歓迎。同市の別の主婦(68)は「値段が高くても安心できる国産を選ぶ」と話した。

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