トランプ氏の行為は「解任に相当」 憲法学者ら米下院で証言

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ドナルド・トランプ米大統領の弾劾調査を進めている米下院は4日、司法委員会の公聴会を開き、憲法学者4人が出席した。うち3人がトランプ氏の行為は解任に値すると述べた。

下院で多数派の野党・民主党が推薦する学者3人と、共和党推薦の学者1人が証言した。

与党・共和党が推薦した学者は、トランプ氏の行為は間違っていたが、弾劾には相当しないとの見解を表明した。

下院はこの日の証言も参考に、弾劾訴追の決議案をまとめる。

トランプ氏には、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、軍事援助と引き換えに、政敵のジョー・バイデン前副大統領に関する捜査をするよう働きかけた疑いが出ている。

前日の3日には、下院情報委員会が政府高官らの証言をまとめた300ページの報告書を公表。報告書では、トランプ氏が2020年大統領選にからんで外国の介入を求め、自らの利益を「アメリカの国益より優先した」と結論づけた。

「明確に弾劾に相当」

この日の公聴会では、民主党推薦のノア・フェルドマン・ハーヴァード大教授が、「証拠は明確に(弾劾に相当する問題行為を)構成している」と証言。トランプ氏とウクライナ側とのやりとりは、「大統領職権を個人の政治的得点のために不正に利用した」ことを示していると説明した。

同じく民主党推薦のパメラ・カーラン・スタンフォード大教授は冒頭、下院司法委員会の共和党のダグ・コリンズ筆頭委員に「侮辱された」として、同委員に強く抗議した。

コリンズ委員は、カーラン氏が情報委員会に出た12人の証言を読んでいないと示唆していた。これに対しカーラン氏は、すべての証言記録を読んだと反論した。

「しかし、私が読んだどの証言も、トランプ大統領が次の大統領選に外国の関与を招き、実のところ要求していたことを示している。彼の行為は、私たちが忠誠を誓う合衆国の根幹を揺るがすものだった」

「どの大統領より悪質」

民主党推薦のもう1人の学者、マイケル・ゲアハート・ノースカロライナ大教授は、トランプ氏が「この国に専制君主制が築かれないようにするための防波堤」を攻撃したと述べた。

同教授は、「この大統領による深刻な不正行為は賄賂、大統領権限の行使と引き換えに外国要人から個人的便宜を要求したこと、司法および議会の妨害などを含み、どの歴代大統領による不正行為より悪質だ。過去に弾劾に直面した他の大統領が行った、あるいは行ったと言われた、どの行動と比較しても」と冒頭に発言した。

「ここで審議されている内容が弾劾に相当しないなら、弾劾に相当する行為など何もない」と加えた。

「このように弾劾されるべきではない」

共和党推薦のジョナサン・ターリー・ジョージワシントン大教授は、トランプ氏の振る舞いには賛同できないと前置きした上で、「アメリカ大統領はこのような方法で弾劾されるべきではない」と発言。民主党のしていることは、危険な前例を作りかねないと警告した。

同教授は、「わかった。皆さんは怒り狂っている。大統領も怒り狂っている。民主党側の友人たちも怒り狂っている。共和党の友人たちも怒り狂っている」、「私たちはみな立腹しているが、その結果はどうだ。ずさんな弾劾で、私たちは少し落ち着くことができるのか。それとも、今後のすべての政権でこの怒り狂った状況が続いてしまう、そんな状況を招くだけなのか」と問いかけた。

まるで大学の講義

BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、この日の証言は法科大学院の講義のようだったと評した。

また、4人の学者の証言は本来、情報委員会で政府高官たちが証言した内容が大統領弾劾に値するものか、下院の判断を助けるはずだったと説明。

しかし実際には、司法委員会に関わるほとんどの人と、証人たちの心証は、すでに決しているように思えると述べた。

弾劾手続きとは

合衆国憲法第2条第4節は、「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」と規定している。

弾劾訴追権は下院が、弾劾裁判権は上院がそれぞれ持つ。

司法委員会は来週にも、トランプ氏のどの行為が違法かを明らかにする弾劾訴追の決議案の下書きを始めるとみられる。

下院この弾劾決議案を可決した後、上院が弾劾裁判を行う。上院議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領を解任できる。

現在の下院では、定数435議席のうち民主党が235議席を占めているため、弾劾訴追が成立する可能性は高い。

一方の上院は、定数100議席のうち共和党が53議席を占める。解任の動議成立に必要な3分の2以上の賛成票を得るには、多数の共和党議員が造反する必要があるため、大統領が実際に解任される見通しは少ない。

政府と共和党は、弾劾裁判は最長2週間とするよう求めている。

過去の大統領で弾劾されたのは、アンドリュー・ジョンソン第17代大統領とビル・クリントン第42代大統領のみだが、上院の弾劾裁判が有罪を認めなかったため、いずれも解任はされていない。

リチャード・ニクソン第37代大統領は弾劾・解任される可能性が高まったため、下院司法委の弾劾調査開始から3カ月後に、下院本会議の採決を待たずに辞任した。

(英語記事 Trump's Ukraine conduct impeachable - law experts