年々上昇するタワマンの高額維持費、この先いくらあれば足りる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、都心のタワマンに住む45歳の未婚女性。住宅維持費が年々上昇するため、老後資金をいくら貯めたらいいのかわからないといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

45歳独身です。32歳で都心のタワマンを購入し、住宅ローンは5年前に完済しました。

管理費・修繕積立金で毎月4万7000万円、固定資産税・都市計画税で年間27万8500円かかり、いずれも毎年少しずつ上昇しています。来年あたりに1回目の大規模修繕があり、150万円ほど一時金を支払う予定で、今後、大規模修繕の度に数百万円を支払う必要があることがわかっています。

年間350万円を貯蓄にまわしており、企業型確定拠出年金、NISA 、外貨定期預金、投資信託などに分散させて合計3100万円ほどありますが、住宅維持費が高額なため、65歳定年までにいくら貯蓄を用意すればいいのかわからず不安です。老後は、住宅リフォームが必要になると思いますが、退職金は望めません。現在の年金支給予定額は16万円ほどです。

<相談者プロフィール>

・女性、45歳、未婚

・職業:会社員

・居住形態:持ち家(マンション)

・毎月の世帯の手取り金額:33万円

・年間の手取りボーナス額:200万円

・毎月の世帯の支出目安:20万円

【支出の内訳】

・住居費:4.7万円(管理費・修繕積立金)

・食費:4万円

・水道光熱費:1.3万円

・教育費:なし

・保険料:0.2万円

・通信費:0.3万円

・車両費:なし

・お小遣い:5万円

・その他:4.5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:13万円

・現在の貯蓄総額:3100万円

・現在の投資総額:300万円

・現在の負債総額:なし


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。

65歳定年までに、いくら貯蓄を用意すれば良いのかというご相談です。住宅ローンは完済し、それなりの貯蓄を蓄え、また継続的な貯蓄もできているが、住宅の維持費やリフォーム費用などの負担も大きく、漠然とした不安を抱えているケースです。

ご相談者に限らず、将来に対して漠然とした不安を抱えている方は多く、そのほとんどが、将来の見通しを立てていないこと、将来の先行きが見えていないことによる不安です。

漠然とした不安を可視化して老後の見通しを立てる

まずは、現状のまま行くと将来どうなるのか、シミュレーションを作成してみましょう。

上記前提条件のもと、キャッシュフロー表を作成してみました。いかがでしょうか。

ご相談者の場合、いただいた情報では、大規模修繕やリフォーム以外に大きな支出はないようです。既に住宅ローンは完済しており、年間350万円の貯蓄と非常に良好な状況にあります。

現在の生活を維持することを目標とするのであれば、十分老後の準備ができるといえるでしょう。90歳時点でも約4000万円の資産が残る計算となるので、その他ある程度大きな支出があったとしても、安心です。

まずは現在の生活を継続した場合で考えましたので、これ以外にどのようなことを想定しておけば良いのかについて考えていきましょう。

現在のタワーマンションに一生住み続けるのか?

既にローンも完済しており、固定資産税や管理費・修繕費のみの支払いとなっています。しかし、ご相談者が懸念しているように、タワーマンションの場合、管理費・修繕費の額も高額となります。また、お部屋が高層階の場合には、高齢になった際に外出等が負担となる場合もあります。

エリアにもよりますが、将来的に売却や貸すという選択肢もあります。ご自身のライフスタイルの変化に合わせて、より効果的な選択肢を選ぶことができるように準備をしておくと良いでしょう。

万が一の際の保障は十分かどうか?

作成したシミュレーションは、“健康で今の収入が継続する”前提となっています。しっかりとお仕事をされて収入があっての貯蓄なので、もし大きい病気などで収入が下がってしまった場合、シミュレーション通りにはいきません。そのための保障も最低限必要となります。

ご相談者の場合は、既にそれなりの金融資産があるので、何かあったときの治療費や生活費などはある程度は手元から出せます。ただ、ガンなどの大きな病気や事故などで介護状態になってしまうなど、継続的に収入が下がってしまうような場合、現在の貯蓄を取り崩すことによって、将来への準備が不十分になってしまうリスクもあります。保険料と貯蓄のバランスを考えながら、3大疾病と呼ばれる、「ガン・急性心筋梗塞・脳卒中」や介護に備えておくと、より安心でしょう。

老後に向けての効果的な資産形成

ご相談者の場合は、年間の貯蓄額も多く、もし順調にこのペースで貯めることができれば、そこまで大きなリスクを負って運用をしなくても、老後の準備はできそうです。

しかし、長期的な視野で見た時のインフレリスクによるお金の価値の目減りや、税制的な効果を考えると、バランスよく資産運用を組み入れるのも重要となります。

ご相談者のお勤め先は、企業型確定拠出年金を導入しているようです。規約によっては、企業が拠出する掛金に加えて、加入者本人が上乗せして拠出することができる「マッチング拠出」や、個人型確定拠出年金であるiDeCoとの併用を認めている企業もあります。ただし、マッチング拠出を採用している企業の場合は、iDeCoとの併用はできないので、注意が必要です。

60歳以降にならないと受け取れないという縛りはありますが、目的が老後の資金準備であれば、税制面のメリットを受けながら運用することができます。60歳より前に使う可能性がある資金については、つみたてNISAを利用するなど、目的に合わせて使い分けるのが効果的です。

将来に対しての不安がある場合は、このように一定の見通しを立てた上でシミュレーションを行うことで、不安が取り除かれ、より適切な準備をすることができます。不安なままで放置せず、ゆっくりと整理する時間を取りましょう。そうすれば、安心して普段の生活を楽しむことができるはずです。

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