「読み」に課題

 西洋にあって東洋にないものは何か。福沢諭吉はこう書いた。〈形があるものでは数理学と、形がないものにおいては独立心〉、この二つである、と。(ちくま新書「現代語訳 福翁自伝」)▲120年ほどたって、少なくとも「数理学」はがらりと変わったらしい。79カ国・地域から参加した昨年の学習到達度調査(PISA)の結果が公表された。日本の高校1年生は「数学的応用力」で6位、「科学的応用力」で5位と、トップ水準を保ったという▲それに比べて「読み」はどうも振るわない。前回(2015年)は8位だった「読解力」が15位に下がった。「今や数理学あり」と単純に喜べたものか、福翁だったらどう思うだろう▲読解力の出題では、ネットニュースなどさまざまな文章を引いて、真偽を見抜き、正しい情報を選ぶ力も試された。日本はとりわけ、ここが弱かったという▲出題はパソコンでなされたが、日本の生徒はそういう形に不慣れで、読解力が振るわない一因になったと文部科学省はみている。パソコンを使った学習を充実させれば挽回できると、そんな見方もあるらしい▲パソコンでの出題に戸惑った向きはあるにしても「慣れ・不慣れ」の問題なのか、よく読み取る必要がある。「読み」を課題とするのは、どうやら生徒ばかりではない。(徹)

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