石木ダム理解、協力を 町長は従来答弁に終始 川棚町議会一般質問

 東彼川棚町議会は5日開会し、一般質問に7人が登壇した。県と佐世保市が同町に計画する石木ダム建設事業で、水没予定地に住む13世帯の宅地が11月、土地収用法に基づく明け渡し期限を迎えたのを踏まえ、今後の町の姿勢をただす質問が相次いだ。山口文夫町長は「住民に事業への理解と協力をお願いしたい」と従来通りの答弁を述べるにとどめた。

 水没予定地の住民、炭谷猛議員は、家屋の撤去や住民の排除など行政代執行の手続きが可能となり、「地元は緊迫した日々を強要されている」と指摘。「町長は住民の生命と財産を守るのが責務では」と迫った。

 これに対し、山口町長は「知事には対話の姿勢がある。対話での解決を願っている」と答えた。また、県が予備調査に入る1972年、当時の町長が「県が独断専行、強制執行などに出た場合、総力を挙げて反対する」との内容で住民側と交わした覚書について考えを問われ、「調査結果を住民側に報告した時点で覚書は履行された」と従来の見解を述べた。答弁の締めくくりに「古里に住み続けたいとの思いは理解するが、町長としての古里は川棚町。町民がより安全安心に生活できるよう、議員にも理解と協力をお願いしたい」と呼び掛けた。

 一方、川棚川下流域の治水面でダムの必要性を訴えている田口一信議員は、13世帯に土地の明け渡しを求める土地収用委員会の裁決について「行政庁の命令であり、強制力がある」と強調。「住民は早急に移転の方法を考えなくてはならない」とし、町の移転支援の方針をただした。山口町長は「町としての権限はなく、積極的にお願いできる立場にない。住民の『住み続けたい』という気持ちは尊重したい」とかわした。

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