最後は日本語で「ありがとう」 韓国児童が長崎の作家とアート交流 長崎県美術館と釜山の美術館 合同でワークショップ

マスキングテープなどを使って釜山の街並みを描いた作品の完成を喜ぶ子どもたちと波多野さん(後列右から4人目)=韓国・釜山市立美術館

 長崎県美術館(長崎市)と韓国・釜山市立美術館が合同で開く文化交流事業のワークショップが11月30日から2日間、釜山市立美術館であり、活水中・高(長崎市)の美術教諭で作家の波多野慎二さん(55)と釜山の小学生25人が現代アートの制作を通して親睦を深めた。

 両館は、2008年度から芸術・文化を通じた国際交流を開始。教育普及プログラムを中心に、双方の子どもたちの作品展を両館で展示したり、アーティストを講師として交換派遣するワークショップを実施したりしてきた。2011年度、両館で交流協定を締結。連携しながら毎年多彩な交流事業をしている。

 今年は日韓関係の悪化が影響し、インターネット中継を活用して双方の子どもたちが学びあう「遠隔授業」は中止された。しかし両館の「文化を通した日韓の相互理解と友好関係の深化」という共通認識の下、講師交換派遣事業は継続。長崎の芸術家が釜山に出向き、現地の子どもたちに作品作りを伝授するワークショップが実現した。

 小学低学年(13人)と高学年(12人)のグループに分け、波多野さんが長崎と釜山を、街並みや建物などの画像を使ってクイズ形式で紹介した。その後、子どもたちはキャンバスに釜山の街並みをマスキングテープとアクリル絵の具6色を使って表現。さらに、縦1.4メートル、横5メートルの紙に同様の手法で釜山の街並みをみんなで描いた。

 「マスキングテープで描くのが新鮮だった」「日本の先生とワークショップをして面白かった」「本当に気分が良かった。次も参加したい」-など、参加者アンケートでは日本作家との触れ合いに好印象の感想が多く寄せられたという。

 波多野さんは「はじめはみんな緊張していたが、一緒に絵画を作っていくうちに距離感が縮まった。最後は日本語で『ありがとう』『さようなら』と言ってくれた。生き生きとした笑顔がとても印象的だった」と感想。「釜山の美術館スタッフを含め市民はとても友好的」と語った。

 交流事業を取りまとめた長崎県美術館のチーフエデュケーター、守屋聡さん(43)は、「参加者からは高評価を受けており、確実に日韓交流に貢献していると感じる。両館がこれまでに培ってきた信頼関係と、両地域の国際交流に対する理解があるからだろう。続けていけるよう努力したい」と話した。

© 株式会社長崎新聞社