米統計分析会社CEOが99歳で死去 MLBなど北米4大スポーツ公式記録を担当

エリアス社はMLBなどの公式記録を担当している【写真:Getty Images】

1970年代にチームやメディアにオンタイムでの記録情報提供をはじめる

 11月29日、野球をはじめとするスポーツの統計分析会社「エリアス・スポーツビューロー(以下エリアス社)」のCEOを長年務めたシーモア・シウォフ氏が死去した。99歳だった。

 シーモア・シウォフ氏は1920年11月9日にニューヨークのブルックリンで生まれた(以下敬称略)。

 エリアス社は1913年にアル・マンロー・エリアスとウォルター・エリアスの兄弟によって創設されたスポーツ統計分析会社。1919年にアメリカン・リーグとマイナー・リーグの公式統計を担当したのをきっかけに、MLBの記録を一手に担うようになる。

 シウォフは1939年、ニューヨークのセントジョンズ大学に入学すると同時にエリアス社でパートタイムで働き始めた。その後、第二次世界大戦で陸軍に従軍してイタリア戦線で負傷。復員後、セントジョンズ大で会計学の学位を取得したのちに会計士としてエリアス社に戻った。この時期、シウォフはMLBの打撃、投球記録のリーダーに関する最新の統計情報を、AP通信社などの電信サービスに届けていた。

 エリアス兄弟が1940年代に亡くなった後、会社はレスター・グッドマンによって継承されたが、1952年にグッドマンが死去するとシーモア・シウォフは、アル・マンロー・エリアスの未亡人から株式を買収した。この時期まで、エリアス社は野球の記録が中心で「Al Munro Elias Bureau」と名乗っていたが、シウォフはより広範なスポーツの記録を取り扱う会社にするため、社名を「Elias Sports Bureau」と改めた。

 エリアス社は1970年代にコンピュータを導入して統計の精度を向上させるとともに、選手のパフォーマンスの予測も始めた。コンピュータープログラミングを通じて、チームやニュースメディアに、オンタイムで記録情報を提供するようになった。

 それまで、ファンは、シーズンオフに発行されるレコードブックで選手の記録を知るしかなかったが、エリアス社によって試合途中でも達成された記録について知ることができるようになった。エリアス社がオンタイムでの情報提供を始めたことで、バリー・ボンズのシーズン本塁打記録やイチローのシーズン安打記録なども、記録達成の瞬間に世界に伝えられるようになったのだ。

 エリアス社は北米4大スポーツと言われるMLB、NFL、NBA、NHLの公式記録を担当。また、全国、地方のスポーツ放送局やウェブサイトに、データとコンテンツを提供している。最近では女子プロバスケットボールやプロゴルフの公式記録も手掛けるようになった。

 シーモア・シウォフは、67年間にわたってエリアス社を率いた。亡くなる数か月前までオフィスに出勤していたが、今年に入って会社を孫のジョー・ギルストンに譲渡した。彼は自らの仕事の魅力について「私が統計という仕事について気に入っているのは、過去を振り返る機会を与えることができるというところです」と語っている。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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