就活セクハラ 就職活動を出会い系と勘違いしセクハラ三昧の企業側社員 この理不尽な行為を変質者と言わず何と呼ぶ|春山有子

犯罪者に面接をさせる企業(写真はイメージです)

12月2日、就職活動中の学生に対し企業側の社員等がセクシャルハラスメントを行う“就活セクハラ”について、有志大学生による団体が根絶を訴える記者会見をしたことで話題となっています。

会見では当事者の大学生が、社員との食事の場でカ彼氏の有無などを聞かれたことや、OBとのマッチングアプリを出会い系まがいの認識を持って利用している社員等がいることを訴えました。

この会見の翌日以降、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)をはじめとするいくつかの番組で取り上げらえたこともあり、SNS上は多岐にわたる立場からの様々な声で溢れました。

「就活セクハラって私は経験した事ないんだけど本当なの? もし大変な思いしてるなら就職する前に分かって良かったじゃん。ブラックと分からず入ってしまったら被害を訴える事さえ出来ないかも知れない」

「子供産んで7年ぶりに就活したら、『44歳ですかぁ〜僕の3つ上だから採用されたら最年長ですよ〜』ってニヤニヤ言ってくるから家に帰ってから辞退のメール送った。人手不足とかよく聞くけど、働きたい主婦たくさんいるのにな」

「アラフォー以降は就活セクハラの何が嫌か全く分かってないよね。そもそも容姿いじりが『何がダメなの?』だし」

「就職浪人の頃、『結婚の予定は?』とか『あなたくらいの年齢は採用しても結婚してすぐ辞めちゃうからね〜』とか、挨拶かと思うほど必ず聞かれた」

「就活セクハラでぴーぴー言っとったら、入社してからも、大変よあなた。そういうのをうまくかわしたり、断固断る意地で対応することを覚えないとキリがないよ? 大学卒業までってすごく狭いコミュニティなわけよ」

「離婚して子供引き取ってシングルファザーになった時、当時勤めてた会社から降格や差別的な扱いを受けたのを思い出した。再就職の時の面接でも『シングルかぁ』とか『急に休むんやろ?』とか『再婚したら?』とか色々言われたなぁ。これもセクハラやパワハラの部類になるのか?」

「就活セクハラが無くならないのは『セクハラされても入社を希望する女性がいるから』ではなく『就活生の弱みに漬け込んでセクハラするクズがいるから』だろ。就活生の女性に責任転嫁すんなよ」

「TVは『セクハラの線引きが難しい』とか受け取る側の問題のようにまとめた。抵抗できない学生にホテル行こうとか性的な質問するのは、企業コンプライアンスに反してる」

「就活アプリなんか相手の実態がわからない出会い系アプリと一緒だぞ。利用してる自分にも責任あるんだぞ。何でもかんでも #就活セクハラ って言うなよ」

「私は東南アジアの求人に応募したら、『何で東南アジア希望なの? 日本じゃモテないから東南アジアで女遊びしたいとか?』って言われた。お前と一緒にするな」

「彼氏有無とか、就活に関係ないプライベートの発言は全部セクハラになるの? 食事中の会話でしょ? 私の感覚だと、サラっと流せない許容範囲の方が気になるわ」

「ここ数年、面接官を任されてるんだけど、社長からは『20〜30歳くらいの未婚で雰囲気が色っぽい子を積極的に取ってね』と言われたりするので、そういう子が面接に来た時は会社のマイナス面ばかり告げてなんとか辞退してもらえるように仕向けている」

「声を上げて会見した女子大生、どれだけ訴えても大半の会社では『そんな事でワーワー言うような学生は入社して欲しくない』で終わるよ」

「中途採用の試験を受けた会社で『一緒に働きたいと思うから、面接受かる為に色々教えてあげるよ』とランチや食事に誘われ続けた事があったな。最終面接までいったけど、最後は『食事にいかなかったから落ちちゃったね』と言われ落とされた」

SNS上の声を大まかに分けると、

(1)恋人の有無について聞かれる、就活セクハラをされたことがある(「結婚や出産ですぐに辞められては困る」というニュアンスが含まれていることもある)。

(2)性的な目で見られる、または性的な話題を振られる、就活セクハラを受けたことがある。

(3)就活セクハラを受け流せないやつなんぞ半人前である。

(4)就活セクハラは自己責任。

といった傾向があるように見受けられます。

ところで筆者は、新卒時も中途時も就活セクハラを受けたことがなく、周囲の友人たちからもそういった話は聞いたことがありません。

2000年代前半に就職活動をした筆者らは、#圧迫面接 がトレンドだった世代です。みな圧迫面接に胃をキリキリとさせ、威圧的な社員らの言動に耐えながら50社受けて1社最終面接まで行けば万々歳、といった時代でした。筆者も唯一最終面接までたどり着いた会社の社長に、「おまえは波風を立てる顔つきをしてるな。要は自己中心的で我が強そうだってことだよ」と、場末のスナックで初対面の「趣味:説教」みたいな中年男性が言いそうなセリフを言われたことは忘れられません。当時はなんて失礼なんだと腹が立ちましたが、現在はフリーランスが水にあった生活をしているので、社長の人間を見る目はさすがだと言えます。

……というのは余談ですが、上記(2)については、痴漢被害にしか思えません。「うほー! かわい子ちゃん! あぁ〜良いケツしてんなあ。俺のどタイプ! 付き合いてぇなあ〜。ハメてぇなあ〜」なんて頭の中の声を就職活動の面接やそれに準ずる場で発することができるなんて、変質者以外の何物でもありません。

だからこそ上記(3)や(4)は、「スカートを履いているから痴漢をされるのである。あなたが悪いのである」といった痴漢二次被害の典型にしか見えません。

入社してある程度の人間関係が出来上がったり、それぞれの性格を把握した上で、酒席で「おっぱい大きいよね」等言われてからの“受け流し”なら、できるかもしれません。

ですがここは就活の面接の場。「入社するために面接を受けに来ている人間に対し、突然性行為を迫ったり卑猥な言葉を浴びせる」という行為は、「通勤のために電車移動している人間に対し、突然体を触ったり耳元で卑猥な言葉をつぶやき続ける」という痴漢行為とまったく同じように見えるのですが、いかがでしょうか?

痴漢は満員電車や深夜の路上だけではなく、真っ昼間も会社の応接室(または会議室)にも出没するのだと、肝に命じておきたいですね。(文◎春山有子)

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