VOGUEやGQの出版社、サステナビリティ方針を刷新し気候変動対策に着手

『VOGUE』や『GQ』、『WIRED』などを世界31カ国で出版するコンデナストはこのほど、気候変動やプラスチックに関する新たな方針を発表した。同社はメディアとして初めて国連気候変動枠組条約の「ファッション業界気候行動憲章」に署名。さらに循環経済を推進する「新プラスチック経済グローバル・コミットメント」にも参加し、石油由来やリサイクルできないプラスチック包装材を切り替えていく。各媒体でも今後、それぞれの切り口で持続可能な生活を促進する情報を発信する。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松遥香)

ブランド力や影響力を使い、サステナビリティを推進する動きは世界的なメディアでも加速している。2017年8月、米ファッション誌『マリー・クレール』がサステナビリティ特集号を出して以降、国内でもサステナビリティ特集を組むファッション誌が増えてきた。今年5月には、英紙ガーディアンが紙面で使用する用語手引きを改訂。気温上昇による人類の危機的状況を「気候変動」という言葉で表すのは受け身的で不十分とし、「気候非常事態」「気候危機」「気候崩壊」を優先的に使うと発表した。

2018年12月、ファッション業界が発表した「ファッション業界気候行動憲章」は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指し、温室効果ガスの排出量の測定や再エネ、低炭素輸送、循環型ビジネスモデルの実現などに向けて取り組むことを約束するものだ。国連によると、世界の温室効果ガスの全排出量のうちファッション産業が排出する量は8-10%を占める。同憲章には、アディダスやアシックス、GAP、ステラ・マッカートニー、バーバリー、H&M、ナイキ、グッチやサンローランの親会社ケリング、ZARAの親会社インディテックスなどのブランドや小売業者、中国紡織工業連合会などの業界団体、ファッション業界のサステナビリティを推進する団体などが署名している。

コンデナストは今後、温室効果ガスの排出量を計測。2020年の早い段階で、環境負荷に関する評価報告書を発行し、排出量の削減目標などを含むサステナビリティ目標を設定する。そして、インディテックスやケリング、ステラ・マッカートニーなどと協働し、ファッションやメディアの事業運営が環境や気候変動に負荷を与えないような行動を推進していく。同時に、衣服の再利用や持続可能なファッションの推進、環境負荷の少ない革新的な原材料やテクノロジーの開発を推進し、消費者の行動に変化をもたらす取り組みも行う。

プラスチックの循環経済を構築することを目指す「新プラスチック経済グローバル・コミットメント」には、世界の大手企業のほかにNGOや大学、政府、業界団体、投資家なども署名している。これを組織するのは、世界で循環経済を推進する英エレン・マッカーサー財団と国連環境計画。署名企業は、2025年を目途に、プラスチックを使い捨てるのではなく再利用する事業モデルへと転換し、事業で使用するすべてのプラスチック包装材を再利用やリサイクル、堆肥化できるものにするなど取り組む必要がある。

コンデナストでは今年から、世界のオフィスの半分以上で、石油由来やリサイクルできないプラスチック包装材を雑誌などの包装に使用することをやめるよう取り組みに着手している。今後は、プラスチックの使用を完全に取りやめるか、リサイクルできる包装材を使用する、もしくは植物由来のものに切り替えていくことを目指す。2025年までには、すべての市場において、石油由来やリサイクル不可能なプラスチックの使用をやめると誓約した。

日本国内での本格的な取り組みはこれから進めていくようだ。現状では、今年9月から定期購読の発送用ビニール袋を環境負荷の少ないものに切り替えた。社内でも、社員を対象にSDGsセミナーを行うなどして、サステナビリティの浸透を進めている。コンデナスト・ジャパンによると、国内でも環境課題への読者の関心は若年層を中心に非常に高まっているという。

コンデナスト・インターナショナルでグローバルCOOを務めるウルフギャング・ブラウ氏はこう話している。

「ファッションはいつの時代も社会の大きな変化を反映し、文化を形成する一翼を担ってきた。ファッションがこれほどの影響力を持っているのは、それが時代に即したものだからだ。今日、デザイナーや製造にたずさわる人、ファッションブランド、ファッションジャーナリストは、ファッションをどのように創り、消費するのかを根本から考え直し、新たにデザインし、再構築する責任がある。私たちには、パリ協定を達成するという確固たる意志がある。世界トップのファッション誌の出版社として、前向きな取り組みをけん引し、ベストを尽くすことを約束する」

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