社説:日米協定承認 互恵的な関係にあるか

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 日米貿易協定は参院本会議で承認され、国内手続きを終えた。

 国会では議論が深まらず、「ウィンウィン(相互利益)」の協定になったとする日本政府の主張の根拠が明確に示されないまま来年1月に発効することになった。

 対象を広げた今後の交渉に悪影響を及ぼすことはないだろうか。

 農産品について日本はコメの無税輸入枠設定は免れたものの、米側が求める牛豚肉やチーズ、小麦などの関税撤廃・削減を幅広く受け入れた。

 一方、対米総輸出額の35%を占める日本車と関連部品の関税撤廃については、「さらに交渉する」との文言だけで、時期も明示されなかった。

 結局、環太平洋連携協定(TPP)のおいしいところばかりを米側に持って行かれたというのが実情ではないか。平等な協定とはとても思えない。

 国会で協定の議論が深まらなかったのは、焦点だった自動車関連の関税撤廃について政府が不誠実な対応に終始したことが大きい。

 政府は関税撤廃が事実上見送られたにもかかわらず、将来の撤廃を見込んだ経済効果分析を示すだけで、野党が求めた撤廃されない場合の試算の提出を拒んだ。

 世界貿易機関(WTO)は2国間の貿易協定を結ぶ場合、90%の関税撤廃率を目安として求めている。自動車関連の関税撤廃ができなければ、そのルールに違反する可能性があることも、政府が試算を拒んだ理由の一つではないか。

 来年11月に大統領選を控えているトランプ米大統領は、成果をアピールするため来春以降に始まるサービスや投資分野の「第2弾交渉」でさらなる市場開放や譲歩を求めてくる可能性が高い。

 協定の付属書には、米国は農産品について「特恵的な待遇を追求する」とあり、農業分野で追加交渉を迫られることもありうる。

 日本政府は自動車関連の関税撤廃を前提に協定をまとめた以上、今後の交渉で明示させる責任があるのは当然だ。

 だが、それを逆に今後の取引材料に使われ、さまざまな分野で譲歩を強いられる懸念も拭えない。

 米側がちらつかせてきた自動車の追加関税についても、安倍晋三首相はトランプ氏に発動しないことを確認したとするが、協定に記載があるわけではない。

 日米共同声明に掲げる「互恵的で公正かつ相互的な貿易」の理念に背かない粘り強い交渉を、日本政府に求めたい。