退職後、確定拠出年金をうっかりそのままに…自動移換されたらどうすればいいの?

会社で加入していた企業型確定拠出年金を退職後そのままにしておくと自動移換されてしまいます。

退職時に速やかに手続きを行うように言われているかと思いますが、実際に自動移換になった場合にはどうすれば良いのでしょうか?


自動移換で生じる3つのデメリットを知っておこう

自動移換とは、企業型確定拠出年金の加入者資格を喪失して放置しておくと最終的に行き着く状態です。

たとえば3月末で退職した場合、企業型確定拠出年金の加入者資格喪失日は退職日の翌日「4月1日」となります。4月1日の翌月、つまり5月からカウントして6ヶ月以内に移換など手続きを行わない場合、11月1日から自動移換の状態となるのです。

自動移換と言うとなんとなく聞こえはいいかもしれませんが、以下のようなデメリットが生じることになります。

・現金の状態で管理され、資産の運用ができない

・運用できない状態にも関わらず、毎月の管理手数料がかかり資産から差し引かれる

・自動移換中の期間は、老齢給付金の受給要件である加入者等期間にカウントされない。そのため受取年齢が先延ばしになる可能性がある

ただし、例外的に放置していても自動移換に至らないケースがあります。他の企業型または個人型の確定拠出年金口座を持ち、本人情報(基礎年金番号・性別・生年月日・カナ氏名)が一致する場合です。

その場合は、該当の口座に移換されることがあります。とは言っても、住所が変わったなどで移換されないこともありますし、基本的に放置しておくことはオススメできません。

自動移換後に行う手続きには4つの選択がある

自動移換された場合は、自分の資産でありながら実質的に凍結状態になります。しかも口座管理料がかかり続けるのですから、何らかの手続きを行わなければなりません。

その際の選択肢は4つあります。

1.iDeCo加入者になる(iDeCoに資産を移換、掛金を拠出する)
2.iDeCo運用指図者になる(iDeCoに資産を移換、掛金を拠出せず運用のみ行う)
3.脱退一時金を受け取る(※要件を満たした場合に限る。原則60歳まで引き出し不可)
4.勤務先の企業型確定拠出年金に移換する

なお、自動移換される際には3,300円(特定運営管理機関手数料)と1,048円(連合会手数料)の計4,348円の手数料がかかっています。また、自動移換後、4ヶ月を経過すると月額52円の手数料もかかるので、早めに手続きを行いましょう。

近いうちに働く予定がある人に注意してもらいたいこと

退職して働いていない場合はiDeCoへの移換を考えるかと思いますが、数カ月以内に働こうと思っている人は注意が必要です。というのも新しい勤務先に企業型確定拠出年金がある場合、会社によってiDeCoとの併用(同時加入)が認められていないことがあるのです。

そのような場合は、自動移換後の手数料(月額52円)がかかったとしてもiDeCoに移換せずに勤務先の企業型確定拠出年金へ移換することを考えた方がいいかもしれません。なぜなら一度iDeCoに移換した資産を企業型確定拠出年金に移すことでさらに手数料がかかるからです。

運営管理機関によりますが、たとえば楽天証券やSBI証券では4,400円です。自動移換からiDeCoへの移換で4,348円かかるので合計すると8,748円になります。また、移換に要する時間についてもそれぞれ2-3ヶ月かかり、合わせると半年近く運用する機会を失うのは避けたいところです。

なお、勤務先によってはiDeCoとの併用が認められるケースもありますが、その際は毎月かかる手数料負担についても把握しておきましょう。

企業型では会社が負担しますが、iDeCoでは自己負担することになるので企業型の方がコスパはいいのです。ただし、企業型では運用商品のラインナップがあらかじめ決められているので自分の希望する運用商品がない可能性もあります。今後の働き方も含めよく考え移換先を決めましょう。

iDeCo加入者になることがベターな選択

働く予定がない人は、掛金を拠出しても税制メリットもないし、とりあえずiDeCoの運用指図者になればいいと思われているかもしれません。運用指図者は掛金の拠出をせずに運用のみ行います。

運用については、元本確保型商品(定期預金や保険)と元本変動型商品(投資信託)から選択することになりますが、手数料が毎月かかります。金融機関によりますが最低でも66円かかり、元本確保型商品だけで運用すると手数料によって元本割れを起こします。

また、掛金の拠出を行わないと資産額を大きく増やすことは難しいとも言えます。iDeCoは老後の備えのための私的年金ですから、拠出時の税制メリットがないとしても掛金の拠出を続けることがベターな選択ではないでしょうか。自動移換された機会によく考えてみてはいかがでしょうか?

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