「不正指示、従うしかない」 職員約90人のほとんどが地元出身 地縁・血縁のつながり同調圧力強く 〈検証・島尻消防〉上

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 「不正せざるを得なかった」。島尻消防組合消防本部に勤務する男性は今夏、幹部から救急活動の時間記録の書き換え指示を受けた。「『現場到着時間が遅いから、実際より早く到着したように書き直せ』と言われた。これまで何度も指示を受けて書き換えた」。男性はうつむき、手で顔を覆いながら言葉を続けた。

 「(記録の書き換えは)漫然と続けていた。改ざんという意識はあった。でも職員のほとんどが地元出身で、幹部に先輩もいる。人間関係が壊れると私生活に影響が出る。仕方ないという気持ちでやっていた」。男性は大きくため息をつくと、下を向いたままつぶやいた。「不正を正すべき立場の幹部が、不正を指示している。誰に相談すればいいのか」

 島尻消防は南城市と八重瀬町の2市町が共同運営している、一部事務組合の消防組織だ。管理者は瑞慶覧長敏南城市長、副管理者は新垣安弘八重瀬町長。

 島尻消防に上位組織は存在せず、総務省消防庁にも指導権限はない。監督責任の所在が曖昧な状況だ。加えて、約90人いる島尻消防の職員はそのほとんどが地元出身者だ。

 40代の男性職員は「数人を除いて、あとは管轄地域の出身者で組織されている。不正が横行する大きな原因の一つがこれだ」と問題視する。南城市と八重瀬町からの職員出向など、消防組織以外の人材も組織内にいるべきだと強調。「そうでなければ、閉鎖的な雰囲気を変えることはできないと思う」

 地域社会特有の「同調圧力」を強く感じる職員も少なくない。不正を証言する職員の多くは「地縁、血縁によるつながりがとても濃い組織」「幹部には地元の先輩だったり、親戚付き合いのある人がいたりする。不正な指示でも従わざるを得ない雰囲気がある」と指摘する。

 島尻消防の職員採用試験を受験したことがある男性は「採用試験は県全体から募集している。なのに、採用されるのは地元の人ばかりだ」

 不正の慣例化、監督責任者の不在、限られたコミュニティーの閉鎖性―。これらの要因が重なって、命に関わる消防の現場は不正を積み重ねた。

 (嘉数陽)

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 救急活動の時間記録改ざんや条例の基準を超えた昇格(飛び級)、賭博行為の横行など、組織内の不祥事が相次いで発覚した島尻消防組合消防本部。職員や関係者による内部告発や証言により、組織内部の腐敗が明らかになった。不正が横行した背景に迫る。