あのフランサが、J2水戸の試合をスタジアム観戦!理由を本人に聞いてみた

11月24日、2019シーズンの明治安田生命J2リーグ最終節が各地で行われた。

今年、初のJ1ライセンスを取得した水戸ホーリーホックはホームでファジアーノ岡山に1-0で勝利したものの、惜しくも7位に終わりJ1参入プレーオフ進出を逃した。

瀧澤修平のゴールにより今季ホーム最終戦を制した水戸。

6位のモンテディオ山形とは、勝点70、得失点差+19まで同じ。総得点の差でわずかに及ばなかっただけに、あと1点どこかで決めていればと、結果的にこの試合を最後に退任した長谷部茂利監督は悔しさをあらわにしていた。

そんな試合を実は、元ブラジル代表のこの人がスタジアムで観戦していた。

2000年代にドイツの強豪レヴァークーゼンや柏レイソルで活躍した元ブラジル代表フランサ!

現役時代は“魔法使い”さながらの創造性あふれるプレーを連発し、数々の伝説を残したレジェンドだ。

特に2008年のベストゴールに輝いた浦和レッズ戦でのスーパーゴールは、彼の発想と技術がなければ生まれることがないものだった。

フランサがなぜ水戸の試合を観に来ていたのか?試合後にQolyが直撃したぞ。

日本企業の一員として水戸へ

――フランサさん!今日はなぜ、ケーズデンキスタジアム水戸に現れたんでしょうか?

私は今、日本のFootbank(フットバンク)という企業に所属しています。

FootbankはJリーグの水戸ホーリーホックと業務提携を結んでいて、J1昇格だけでなくその先を見据えた、「素晴らしいクラブにするため」の取り組みをクラブと行っています。その過程を知るため2年間一緒に仕事をさせていただいていて、今回はFootbankの一員として水戸の最終戦に来場し観戦しました。

今日の試合は、あと1ゴール。1得点するかあるいは一つ上の山形が1失点をするか、本当にギリギリのところで水戸は6位を逃しました。

ただ原点に帰ってみれば、水戸ホーリーホックは茨城県という今年10月にも魅力度ランキングが7年連続最下位となった地域をホームにしています。しかも、同じ県内にはご存知のようにアジアチャンピオンの鹿島アントラーズという偉大なクラブもあります。

そういった中で今日はこのような、ドラマチックな展開を最後までできました。もちろん6位以内に入ってJ1参入プレーオフへ進出することをイメージしていましたが、現在の状況に関してはクラブにとって非常にポジティブだととらえています。

※山形が町田に逆転され、あと1点!となると、チャント『ロンバルディア』の大合唱と手拍子でスタジアムはもの凄い雰囲気に(動画07:57~)。「水戸を愛する俺らの 声が聞こえているだろ さあ前を向いて闘え アレアレアレアレ」

――選手としてJリーグでプレーしていた頃と比べて、水戸のチームやサポーターを見てどういうことを感じましたか?

柏レイソルがJ2にいた時に水戸との試合を経験しています。クラブ自体の印象としては、当時今日のようなプレッシャーを水戸から感じることは一切なかったので、選手目線としてチームのレベルは圧倒的に上がっているなと。

サポーターに関しては、ここ数試合の水戸の試合を見ていると「昇格するのではないか」ということを期待してスタジアムへ足を運んでいると感じます。

たとえば自分が柏でプレーしていた時は、昇格する、勝つということが当たり前で、サポーターもそれを期待してたくさんの人が来場していました。

今日の水戸も同様で、昇格することを期待させるチームに変わってきていることが以前と比べた時の一番の違いだと肌で感じています。

日本サッカーの現状、そして課題

――柏レイソルの話が出ましたが、同じ時間に裏で行われていた京都サンガF.C.戦ではすごいスコア(13-1)で勝利しました。柏の試合も普段チェックしていますか?

自分がプレーしていた時もそうでしたが、J2で圧倒的なチーム力を保つことができる一方、チーム自体はJ1とJ2を行き来してしまっています。素晴らしいスタジアムがあって、素晴らしいサポーターもいて、チームマネジメントも素晴らしいのですが…。

自分はクラブの中にいないので何とも言えないのですが、上がったり下がったりという印象は拭えないかなと思います。外から見ているのでそれ以上のことは言えません。

――Jリーグでプレーしていた頃と比べて日本人選手のレベルはどうですか?

近年「インテンシティ」といった言葉が使われますが、プレースピード、パスのスピードやフィジカルなどを含め、強度の部分は大きく上がっているなと試合を観ていて感じます。

外国人の選手もなかなかすぐには活躍できないくらい日本人のレベルが高くなっているなと。今日の水戸も日本人選手だけで戦っていましたけど、そういうチームが増えてきている印象があります。

――逆に日本人選手の課題はどこでしょう?

欧州など世界のトップレベルの選手と比べてどういう差があるのかと受け取りましたが、トップレベルのインテンシティの高い試合を経験できる選手が圧倒的に少ないですね。

協会や選手の将来に関わっている人たちは、選手ができるだけ高いステージへ行くための施策を考えないといけないと思います。選手個人の競技レベルを上げることももちろんそうですが、選手がそういう道へ進むための環境作りが重要です。

私が所属しているFootbankはまさにそういうところを重視しています。選手のレベルを上げることよりも、日本サッカーのレベル、そしてクラブのレベルを上げるところにフォーカスし、現在は水戸を中心に関わらせてもらっています。

「W杯ベスト4」を目指す日本のために

――最後に、今後日本でどういう活動をしていきたいですか?

人生なので先のことは分かりません。今は縁があってFootbankで様々なことに携わらせてもらい、日本サッカーの向上、日本サッカー協会が掲げている「W杯ベスト4以上」という目標に合わせて、クラブのレベルを上げていくために仕事をしています。

具体的には、自分の選手としての国際経験であったり、また現役時代のチームメイトたちが今は世界各地のクラブでディレクター等を務めているので、そういった力をどのようにして日本へ“注入”できるかといったところですね。まだしばらくは日本にいると思います。

日本サッカーへの強い思いを持っているフランサ。そのあたりは、Jリーグが1年ほど前に行ったインタビューでも語られている。

フランサが所属するFootbankは、2018年1月に水戸ホーリーホックと業務提携。

フットボールマネジメント事業とシステムソリューション事業を展開しており、代表取締役の竹内一朗氏は同社が“目指すもの”について以下のように話す。

「日系企業であるこのFootbank株式会社を通じて私達は3つのことを目指しています。1つめは、サッカーという世界で一番競技人口が多いと言っても過言ではないスポーツを通じて、人々が感情を共有できる瞬間を増やすサービスを展開すること。2つめは、日本における人口層はますます外国籍が増加し、どのシーンにおいても彼らとコミュニケーションを取らなくては日本人の生活は成り立っていきません。だから、サッカーをコミュニケーションツールとしていち早くその環境に適応できるような空間を創り出すこと。3つめは、『サッカー×IT』を化学反応させて人々の幸せ向上を追求すること。我々は今や6ヵ国の国籍の者が共に働く企業となり、日々サッカーや互いの国の話をしながら自然と国際感覚を身に付けていっております。フランサが会議で日本人スタッフたちと一生懸命に日本語で対話している姿は、個人的に彼と15年来の仲ですが見たことがないので実に新鮮です(笑)」

「他人と話が盛り上がり、親密になっていくには共通の話題があるかないかがカギになります。Footbankを通じて人と人とが繋がり、感情を共有できる瞬間を生み出し続けられる企業(コミュニティ)でありたいと切に願いながらこれからも経営を邁進させていければと思っております。もちろん引き続き水戸ホーリーホックさまとの共同事業を継続させていきながら、水戸という街がより良いコミュニティになっていくことを追求し続けられればと思っております。来年こそはJ1に昇格してもらいたいです!!」

サッカークラブの運営はトップチームの強化だけでなく、会社経営や育成、地域との連携など多岐にわたっている。そこには多くの人が携わっており、だからこそ生まれる“熱”がある。J2最終節の水戸ホーリーホックのスタジアムにも、間違いなくそれがあった。

日本サッカー界のみならず地域の発展を目指すJクラブの活動をサポートする存在として、Footbankのような企業、そしてもちろんフランサの今後にも注目していきたい。

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