「早雲イヤー」閉幕へ 大河ドラマ化は知名度課題 小田原

「北条早雲」を描いた漫画家と歴史家らがその魅力などを語ったイベント =9月、小田原市民会館

 2019年は小田原北条氏の初代・伊勢宗瑞(北条早雲)の没後500年に当たり、神奈川県小田原市などでつくる実行委員会は昨年からさまざまなイベントを繰り広げてきた。2年間で多くの歴史ファンらが小田原を訪れたものの、一般層での知名度アップはいまひとつ。「早雲イヤー」は7、8日のクロージングイベントで幕を閉じるが、宿願でもある北条5代のNHK大河ドラマ化に向けた次なる好機を待つ考えだ。

 大河ドラマ化を目指し北条5代の知名度を高めたい市だが、チャンスだった3代氏康の生誕500年(15年)を“失念”。次の記念イヤーを探したところ、宗瑞の没後500年(19年)を見つけた。また18年は宗瑞の隠居で2代氏綱の居城があった小田原を本拠地として500年の節目になることから、併せて顕彰することにした。

 市や小田原箱根商工会議所、小田原市観光協会などは18年4月、「北条早雲公顕彰五百年事業実行委員会」を設立。「イベント部会」と「学習部会」を立ち上げ、観光客を呼び込むイベントの開催とともに宗瑞や北条5代の功績を伝える学習プログラムの実施にも取り組んだ。

 具体的には、小田原の「本城イベント」をはじめ、支城があった小机(横浜市港北区)や静岡県沼津市などで「支城イベント」を実施。宗瑞の生誕地とされる岡山県井原市の名産品・デニムを使った「早雲デニム」も限定製作した。

 6回にわたる「小田原北条セミナー」のほか、週刊ヤングマガジン(講談社)で連載中の「センゴク権兵衛」で北条早雲を描いた漫画家・宮下英樹さんを招いた特別講演会も開いた。

 市は主なイベントだけで延べ6万5千人ほどが小田原を訪れたとみており、手応えをにじませる。講演会やシンポジウムでは、これまで一般的だった「一介の浪人が下克上で戦国大名となった」という宗瑞像を否定。室町幕府のエリート官僚で中央政府と密接な関係にあったという最新研究を紹介した。呼び名も広く知られているが実際には名乗っていない「北条早雲」よりも、生前に使っていた「伊勢宗瑞」を強調した。

 加藤憲一市長は11月22日の定例会見で、早雲イヤーについて「漠然と言われていた宗瑞の実態が明らかになったのは、シンポジウムなどの成果。小田原の歴史を振り返るチャンスでもあり、魅力発信にも意義あるものだった」と総括。「大事なのはこの後につなげていくこと」とし、北条氏ゆかりの12市町で連携して悲願の大河ドラマ化へ歩みを進める方針を示した。

 一方、市の担当者は「北条ファンが意外と多いことは分かったが、一般の人にまで宗瑞や北条5代が浸透できたかどうか」とし、取り組みの継続に意欲を示す。7、8日に小田原城址公園本丸広場で行われるクロージングイベントでは、次世代の子どもたちに浸透を図るため、忍者や戦国時代をテーマとしたパフォーマンス、トークショーなどが行われる。両日とも午前10時~午後3時。問い合わせは、市観光協会電話0465(33)1521。

© 株式会社神奈川新聞社