ロボットが階段使いごみ出し 藤沢の団地で実証実験

階段を下りるソフトロボット

 階段を上り下りできる荷物運搬ロボットによるごみ出しの実証実験が5日、高齢者が多く住む藤沢市営渋谷ケ原住宅(神奈川県藤沢市湘南台、111世帯)で行われた。同市が取り組むロボット未来社会推進プロジェクトの一環で、慶応大発のベンチャー企業「Amoeba Energy(アメーバエナジー)」(同市遠藤、青野真士社長)と連携。超高齢社会の課題解決へ向け、早期実用化を目指す。

 同社が開発した「階段昇降可能なソフトロボット」(全長77センチ、幅62センチ、高さ61センチ)は、最大斜度35度までのあらゆる階段に適用でき、6キロの荷物も運搬できる。本体の駆動部分には、独自開発した柔軟性と耐性を併せ持つソフトマテリアルの素材(発泡ゴムスポンジ)を使用。人工知能(AI)の自動運転技術を活用し、走行空間センサーによる自己位置推定、ナビゲーション、衝突検知といった機能を備えることで、世界で初めてロボットによる階段昇降が可能になった。

 同住宅の最も初期の棟は1964年に完成。全5棟は3~4階建てで、エレベーターは整備されていない。住民の約半数が65歳以上の高齢者で、階段を使ったごみ出しや荷物の運搬が大きな負担になっている。

 こうした状況を踏まえ、実証実験では最上階の部屋で同ロボットが家庭ごみを積み、遠隔操作で階段を1階まで下降。路上で旋回してごみ集積所まで進み、中央部を傾けて所定の場所にごみを下ろした。同じ実験を繰り返し、いずれも予定通りの動作を確認した。

 同社共同創業者の野崎大幹取締役は「製品化へ向け、連続して安定的な動作が可能になるよう改良を進める」と述べた。同社は2年以内の実用化を目指すとともに、物流システムが自動化された超スマート社会(ソサエティー5.0)を見据え、荷物運搬作業の代行も視野に開発を進める。

 実験には住民や鈴木恒夫市長も参加。自治会長の古屋君枝さん(75)は「上層階の住民は息を切らしながら階段を上り下りして、ごみ出しをしている。ロボットが代行してくれればとても助かる」と話した。鈴木市長は「生活に身近な部分での課題に対応したロボットの開発は市の取り組みにもかなう」と、早期実用化に期待を込めた。

 同社は2018年1月に起業。慶応大湘南藤沢キャンパス(SFC)内のインキュベート施設「慶応藤沢イノベーションヴィレッジ」を拠点にしている。

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