「自然を市場原理にゆだねてはいけない」 大磯丘陵生態系守れ 二宮のチョウ愛好家が講演

大磯丘陵に生息するウラゴマダラシジミについて解説する御法川さん =二宮町立一色小学校

 大磯丘陵に生息するチョウ「ウラゴマダラシジミ」の研究を続けるチョウ愛好家・御法川(みのりかわ)直樹さん(60)を招いた講演会が7日、神奈川県の二宮町立一色小学校で行われた。近年は住宅開発などでウラゴマダラシジミの生息数が減り続けているといい、「自然を市場原理にゆだねてはいけない」と警鐘を鳴らした。

 ウラゴマダラシジミはシジミチョウ科の一種で羽の裏側に黒い斑点を持つ。北海道から九州まで広く分布するが、環境の変化に弱いことから近年は生息域が減少している。

 「どこにでもいるが、どこにでもいるわけではない。(生息域の)生物の多様性を計る指標にもなる」と御法川さん。大磯、二宮、秦野などにまたがる大磯丘陵のウラゴマダラシジミは長い歴史の中で独自の生態を守り、ほかの地域と比べて大型で羽の表面が黒いのが特徴という。

 大磯丘陵にはウラゴマダラシジミだけはなく、全国的にも希少なキイロアシボソテントウダマシなど約1500種の昆虫が生息する。御法川さんは「山地や平地、海岸で生息するような種類が集まって、大磯丘陵はまさに種の交差点のような場所」と解説する。

 大磯丘陵北部の秦野市内で計画された霊園開発では自然保護の立場から反対運動に関わったという御法川さん。開発は計画通り行われ、切り崩された山々から豊かな生態系は失われた。御法川さんは「人間の経済活動と折り合いをつけるのは難しいかもしれないが、生物の多様性を守るための議論を積み重ねることが大事」と訴えた。

 講演会は地元住民らでつくる一色小学校区地域再生協議会の主催で約40人が参加した。

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