浦賀ドック解体進む 歴史的資料保全へ調査 横須賀市

取り壊される予定の住友重機械工業旧浦賀工場の機関工場(横須賀市教育委員会提供)

 かつて日本の造船業を支えた住友重機械工業旧浦賀工場(通称浦賀ドック、横須賀市浦賀4丁目)で、建屋の取り壊しに向けた作業が進んでいる。2003年に閉鎖された浦賀ドックでは15年に一部工場が解体されたが、今回はエンジンの組み立てなどを担った機関工場など3棟が解体予定という。一方、市は産業遺産の資料を後世に残そうと調査に取り組んでいる。

 浦賀ドックは、江戸時代末期の1853年に幕府が築いた「浦賀造船所」が前身。「浦賀船渠(せんきょ)株式会社」となった97(明治30)年以降は旧海軍の駆逐艦や青函連絡船などを建造した。1969年には当時の住友機械工業と合併し、護衛艦や帆船「日本丸」の2代目を手掛けるなどして国内の造船業をけん引してきた。

 2003年3月の閉鎖後、住友重機械工業(東京都品川区)は、15年に約9万9千平方メートルの敷地内に残っていた16棟のうち8棟を解体。市や同社によると、今回は、1938年から52年にかけて建てられた2階建ての機関工場と、1899年完成のドライドック(通称レンガドック)から海水を抜く平屋のポンプ所、1952年築の2階建て社外控所の計3棟を解体する。

 いずれも同社が実施した調査で現在の耐震基準を満たしていないことが判明しており、安全面の観点から取り壊しを決めた。解体に向けた作業に入っており、同社は来年3月末までの完了を目指すという。イベント開催時に限り一般公開されている日本最古のれんが造りのレンガドックは保存するとしている。

 一方、市教育委員会は産業遺産の資料を保全しようと動きだしている。

 市教委生涯学習課は8月下旬の5日間、緊急調査を実施。関東学院大(横浜市金沢区)の黒田泰介教授の協力のもと、レーザーを使って工場建屋内の構造を立体的に計測した。11月8日にも敷地内全体を対象に、操業時の配置図と照らし合わせながら現状を確認する調査にあたった。

 同日の調査に参加した市自然・人文博物館の菊地勝広学芸員によると、工場建屋内には戦前から昭和中期にかけての工作機械や、天井には大正時代に造られた走行クレーンが残存。菊地学芸員は「歴史的な価値は非常に高い。できる限りの資料を残したい」と話している。

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