【社説】26兆円経済対策 真に必要な政策に絞れ

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 国の財政が厳しいとして国民に負担を強いる消費税増税に踏み切ったのではなかったのか。だが「経済再生なくして財政健全化なし」を掲げる安倍政権には経済対策は別格のようだ。

 政府が新しい経済対策を決めた。国や地方の財政支出は13兆円に上り、民間支出分なども含め、事業規模は26兆円に達する。

 まず気になるのは、総額の議論が先行したことだろう。相次いだ閣僚辞任や首相主催の「桜を見る会」を巡る疑惑など政権への逆風が強まるにつれて規模が膨れ上がった感がある。

 規模ありきで盛り込んだ政策について、どれだけ効果や必要性を詰めたといえるだろうか。本音が政権浮揚策だとすれば、大盤振る舞いは許されない。

 もともとは列島各地を襲った台風15号、19号などの甚大な災害の復旧対策として補正予算の編成を急ぐはずだった。それが安倍晋三首相の一言で、経済対策にすり替わったようだ。

 米中貿易摩擦などで心配される世界経済の下振れリスクへの備えや、さらに東京五輪後も見据えた将来対策を名目に、もくろむ規模に達するまで各省庁の政策を動員したといえる。

 2019年度補正予算と20年度当初予算に関連経費を盛り込む。「15カ月予算」として来年早々から切れ目なく執行するためというが、なぜ中長期の政策まで急ぐ必要があるのだろう。

 補正予算は通常予算に比べて国会審議も短く、財政規律が緩みがちだという。十分な審議を避ける狙いがあるのではないかと疑われても仕方あるまい。

 さらに野党からは衆院解散を警戒する声さえ出ている。補正予算は通常の予算より先に決めることができるうえ、選挙となれば経済対策がアピール材料になるためだ。党総裁任期が残り2年を切り、首相にレームダック(死に体)化を防ぐ思惑があったとしても不思議はない。

 肝心の災害関連の政策を見ても、従来型の公共事業の重視であり、防災対策というより景気対策優先になりかねない。

 東日本大震災などこれまでの復興事業でも、住民の十分な納得が得られないまま、巨大堤防などのインフラ建設を進めてしまったケースがあった。

 しかし、毎年のように襲ってくる大きな災害に備えるには、居住地域の移転なども含めた政策の見直しが求められている。インフラ建設を急げばいいという考え方はいかがなものか。

 そもそも政府は「景気は緩やかな回復基調」という見方を変えていない。これほど巨額の財政出動ができる内情だろうか。

 企業業績の悪化から、税収は当初見込みから大幅に下方修正を迫られている。基礎的財政収支を黒字化する時期は昨年、25年度まで先送りしたものの、その達成も困難な状況だ。

 一方で、75歳以上の後期高齢者に対しては、病院などで支払う医療費の窓口負担を現在の原則1割から2割に引き上げる方針を固めた。社会保障費抑制の名の下、国民にはさらなる負担を求め、経済対策では甘い顔を見せてはいないか。

 経済対策としても個人消費は極めて重要だ。負担が重くなる一方で、将来の不安も増せば、財布のひもはますます固くなりかねない。国民生活にとってどうなのか。経済対策にはその視点が欠かせないはずだ。