第3回「STATE VIOLENCE STATE CONTROL〜国家の暴力 国家の支配」

香港の大規模デモは決して他人事ではない

2019年7月1日から香港での大規模デモが続いている。このコラムを書いている11月時点でも、事態は沈静化の欠片も見られない。警官によって何の抵抗もしていない一般市民が銃で撃たれるほかにも、警察の強制排除で転落した大学生などの死者まで出るほど、国家権力の横暴は常軌を逸した行為を平然と行なっている。この民衆蜂起に関する様々な出来事を、他人事と捉えている日本に住む人間の多さに俺は愕然としている。「日本ではあり得ない」「こんなこと起きるわけがない」と思える無関心さが信じられない。

現在、日本の政権を握っている自民党安倍政権の改憲草案というものをご存知だろうか?

第三章十二条の最後には「常に公益および公の秩序に反してはならない」、第十三条には「生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については、公益および公の秩序に反しない限り」とある。公益とは「国益」であり、公の秩序とは「警察」であることがわかるはずだ。

要するに「国の言うことを聞かない人間は、警察によって強制的な処置がされるぞ」と脅している。

改憲された後、現在日本で行なわれている国会前や官邸前のデモなどが「公の秩序に反する」ものになる可能性は非常に高い。そうなると参加者はどのような目に遭うだろうか?

2011年9月11日に新宿で行なわれた原発反対デモで俺は逮捕された。始まってすぐに逮捕されたのだが、連れて行かれた先はいつもの狭い取調室ではなく、広い会場に机が並べられた集団取調場のような場所だった。一番最初に逮捕された俺が調べを受けていると、次から次へと逮捕者がやって来て、あっという間に広い取り調べ会場はいっぱいになった。デモで逮捕する気満々だった警察のやり方がよくわかるだろう。その警察へ命令を出しているのは一体…?

この世の中にハードコア・パンクというものが出現した時の代表的なバンドにDISCHARGEがある。その代表的な曲のひとつが「STATE VIOLENCE STATE CONTROL」だ。「THIS IS STATE CONTROL〜これが国家の支配だ」と連呼する歌詞は、警察の暴力や国家の横暴を唄っているのだが、香港を思い出してみてくれ。この1982年に発売されたシングル・レコードの時代と何も変わっていない。

このまま自民党改憲草案が通り、憲法が改悪されれば日本も香港と同じことになると肝に命じて欲しい。危機に対して立ち上がった香港の民衆は、見習うべき姿ではないのか? 人として当たり前の幸福を追求する権利すら奪おうとしている国家に対してどうやって闘っていくか。香港の民衆の心に寄り添うことができなければ、この国の子どもや若者たちが安心して生きることができる未来などやって来ない。香港は決して他人事ではない。

【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。

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