29歳シングルマザー「教育費に老後資金、不安でたまりません…」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、来春から支出が増えることに不安を感じている29歳のシングルマザー。子どもの教育費に自分の老後資金、どのように準備していけばいいのでしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

子どもを育てるためのお金と、老後に向けての貯蓄が両立できるかとても心配しています。現在、シングルマザーで3歳の娘を育てながら働いています。頑張って貯めているところですが、この春から子どもの幼稚園代と家賃の負担が増えるなど支出が多くなる見込みなので、今後どうなってしまうのか不安なのです。

今は娘を保育園に通わせていません。両親が近くに住んでいるので、仕事中は母親に見てもらっています。そのため、保育費などはかかっていませんでした。ですが、小学校入学前には幼稚園に通うことも必要かなと思い、送り迎えなどは母の協力を得ながら、春から幼稚園に入園させることにしました。その分の支出が増えます。

また会社の家賃補助制度を使用しているため、家賃は3割ほどの金額で済んでいますが、この家賃補助は期限が決まっており、来年春からはその補助が付かなくなります。ですから今まで補助してもらっていた金額の分、支出が増えるのです。

食品会社に勤めているため、食べ物は手に入り、食費はあまりかかりません。お米はふるさと納税をボーナスから払って得ています。外食は子どもとのファミレス(月1~2回程度)がほとんどで、洋服などは通信販売で古着を買っています。交際費が高めなのですが、これは誘われて参加するゴルフコンペやコース代のためです。ゴルフスクールに通い始めたところ、社内外のコミュニケーションツールとしてとても役立っております。ですが高額なので、月に1回にとどめるようにしています。

このようにしてムダ使いをしない生活を心がけているつもりですが、今後が不安でたまりません。貯蓄はどの程度必要で、老後資金づくりは娘が成人してからでも遅くないのかなど、具体的に知りたいと思っています。

〈相談者プロフィール〉

・女性、29歳、バツイチ

・子ども:1人(まもなく4歳)

・職業:会社員

・毎月の手取り金額:27.4万円

・年間の手取りボーナス額:約110万円

・普通預金:約300万円

・定期預金:約500万円

・一般財形:約700万円

【支出の内訳(12.9万円)】

・住居費:3.3万円

・食費:2.1万円

・水道光熱費:0.8万円

・交通費:0.4万円

・通信費:0.3万円

・交際費:2.2万円

・被服費:0.8万円

・趣味・娯楽費:1万円

・その他:2万円


FP:ご相談ありがとうございます。これから支出が増えることで、お子さんの教育費と、ご自分の老後資金が不安なのですね。今後、取り組んでいけそうなことを考えてみましょう。

「教育」は何を望むかで、かかる金額が違う

教育費が心配ということですが、お子さんにはどんな教育を受けさせたいとお考えでしょうか。例えば、小・中・高とすべてを公立に通ってほしいと考えるのか、私立に通わせるのかだけでも支出は異なります。塾に行かせるのか、習い事をさせるのか。そういった多くのことに影響され、教育費は高くなっていきます。

お子さんがやりたいことなどを見つけて、自分から希望してくるのはまだ先になるでしょうから、それらを始めさせる時期などでも変わってきます。つまり、親が主導で決めるのか、子どもの意見で決めるのかということです。

教育費の総額や全体像、そういうものを考えると、その子の進む道で金額が異なるということになりますが、その費用はまとめて支払わなくてはいけないものではありません。幼稚園の費用も月払いですよね。それと同じで、高校生くらいまでは毎月支払って行くことのほうが多いはずです。そうなると、覚悟をして貯めておくべきお金は、大学進学など、高校卒業後の教育費ということになります。

教育費をまとめたデータを見ると、大学在学にかかる費用は一般的に400~600万円ほどです。もちろん通う大学、学部により、もっとかかるという場合もあるでしょうが、今のところ貯蓄は順調にできているようですし、まずはこのあたりの金額を「教育費」として準備しておくとよいのではないかと思います。

住居費がアップしても貯蓄は可能?

住居費は今、3万3000円。家賃補助がなくなると、11万円に支出が増える見込みです。そうなると、家賃の割合は収入の40%ほどとかなり大きくなります。いわゆる適正な家賃割合は、月の手取り収入の25%前後ですから、比較しても大きいことが分かります。

ただ、東京都内ではその割合で住居を見つけることが難しいケースもあります。「都内だから仕方がない、仕事の継続や幼稚園への通園に必要」などと生活や環境を優先するのか、「家賃はできるだけ少なくしておきたい」と考えるのか、どちらを優先するのかは考え方によると思います。

幸い、現状からみると、支出が増えても毎月黒字でやりくりができそうです。いまの月の支出は12万9000円ほどですが、住居費が増え、お子さんが幼稚園へ通い始めると23万6000円ほどに増えると考えられます。それでも3万8000円ほどの余剰が出ることが見込めますので、当然いまよりも、貯蓄のスピードは遅くなってしまいますが、それをコツコツ貯めていくということは可能でしょう。

ゴルフへの支出が多いことを気にされているように感じましたが、メンタル面での充実や仕事がスムーズになるなど利点が多いのであれば、自分への投資的な支出としてこのままでよいのではないかと思います。

老後資金は運用も視野に入れて、コツコツ準備を

老後資金については、今年「老後の暮らしは、年金だけでは2000万円不足する」などという報道があったため、不安に思っている人が多いようです。ですが、全員が2000万円必要ではありませんし、2000万円では足りない人もいます。つまり人により異なるものですから、あまり大きく不安に思わないことです。

相談者さんは将来的にいくらの年金を貰えるでしょうか。1ヵ月の生活費はいくら必要でしょうか。退職金はいくらもらえるでしょうか。このようなことで、必要な老後資金は大きく変わります。

老後資金は、教育費とのバランスを見ながら貯めていかなくてはいけません。いまの貯蓄は20代としては頑張って作っていらっしゃると思います。ただ、すべて貯金で保有していると増やすことは難しいため、iDeCo(個人型確定拠出年金)などで運用することを検討してもよいと思います。

始める際は、加入している公的年金と企業年金により掛け金の上限が異なるので注意が必要ですが、相談者さんは少なくとも30年は運用できますから、複利の力でお金が大きく増えていくと思います。

例えば、毎月1万円を30年積み立てて仮に3%で運用できたとすると、積み立てたお金は360万円ですが、利益が200万円以上出ることが見込めます(実際にはずっと3%で運用できるということはないので、金額は不確実です)。預貯金だけでいくのと、リスクを見込んで投資をするのと、どちらかが絶対にいいなどと断言はできませんが、投資に興味があるのでしたら、ぜひ取り入れることを検討してみてはいかがでしょう?

運用するなら多少知識も必要になると思います。ですが最近はそれらにまつわる情報がたくさん出回っているので、そこから学ぶのもよいでしょうし、FPなどに聞きに行ってもよいでしょう。

ちなみに、iDeCoは私的年金制度なので、税制面で優遇されています。掛け金が全額所得控除となるため、所得税、住民税が安くなります。運用益にかかる税金(20.315%)が非課税となり、受取時も退職所得控除または公的年金等控除が使えます。ただし、60歳まで解約ができず、お金が受け取れなため、「急にお金が必要になったから引き出したい」というようなことには対応できません。

まだ若い段階から意識してはじめると、将来的には良い結果が出ると思います。ぜひ、検討し取り組んでいただきたいと思います。

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