借金魔の夫と2度の復縁、ダメだと思っても続く夫婦のカタチ

自分が夫をダメにするのか、あるいはもともとダメな男なのか……。一緒になるたびうんざりするのにまた復縁してしまうと苦笑しながら話してくれた女性がいます。


結婚した時点で300万円の借金が

大学を卒業して入った会社で、3歳年上の彼と知り合い、恋に落ちたノリコさん(37歳)。まじめでとてもいい人だった彼を親も気に入り、婚約までしたのですが、そこに現れたのが学生時代の先輩であるマサキさんでした。

「マサキは学生時代から、ちょっとアウトロー的な不思議な雰囲気をもった人でした。久々に再会してみたら、友人と起業して楽しくやっている、と。デートに誘われ、おしゃれなレストランやバーをはしごして、気づいたら彼のマンションにいました。とにかく楽しかったですね。私、婚約しているのにと言ったら、オレと結婚しようって言われて」

そのままマサキさんのマンションに棲みついてしまったノリコさん。婚約を破棄し、親からは絶縁され、それでもマサキさんと一緒にいるのが楽しかったそうです。

「27歳で妊娠、そこで初めて婚姻届を出しました。届を出して、さて、これからどうやって結婚生活を送っていこうかと思い、彼と話したんですが、その時点で彼、300万円もの借金があったんです。返せるから大丈夫というんだけど、それは起業とは関係ない個人の借金。もしかしたら金銭感覚がアブナイ人かも、と思いました」

ノリコさんの予想は的中していました。会社は経理担当者がいるし、共同経営者もしっかりしているのですが、彼個人は常にどんぶり勘定、仲良くなるとすぐ大盤振る舞いしてしまうというタイプだったのです。

「子どもも産まれるんだし、きちんと家計を見直そうよと言ったんですが、そういうことを考えるのが苦手みたいで、『任せるよ』って。とはいえ、彼からはろくに生活費も入ってこないんですよ。家計を見直す以前の問題でした」

彼は「アリとキリギリス」における典型的なキリギリスタイプ。お金があればあるだけ使ってしまうし、なければないで使ってしまうのです。結果、消費者金融やカードローンの催促がどんどんやってくることになっていきました。

出産後、そのまま離婚

子どもが産まれることだけは連絡しておこうと、ノリコさんは親と連絡をとりました。さすがに孫ができたとなると親は折れ、「出産はこっちでしたら?」と母親もやさしい言葉をかけてくれたそうです。

「出産ギリギリまで仕事をして産休をとりました。実家といっても自宅から30分くらいなんですが、久しぶりに母の手料理を食べてのんびりしていたらすぐに産まれてしまって。夫は病院に新しい車でやってきました。『ノリコとベイビーを乗せるんだから、安心して走れる車でないとね』って。気持ちはうれしいんですが、それにともなう収入がないじゃん、とツッコみたくなりましたね。彼がどのくらい稼いでいるのか知らなかったけど」

自宅に戻り、育休も半ばで母親に手伝ってもらいながら職場復帰しました。夫はいつも優しい言葉をかけてはくれるし、家にいれば子どもの顔をずっと見ているほどかわいがっていましたが、実際にめんどうを見るわけではなく、家事もやりません。悪気はなく、無邪気ですらあるのですが、そこがよけい彼女を苛立たせました。

「子どもを産んでくれてありがとうと、ダイヤの指輪をくれたんです。この人、どこかおかしいなと思いました。指輪より生活費だろって。まったくお金を入れないわけじゃないんですよ。ときどき30万ポンとくれたり、年末に100万円くれたこともある。だけどそれじゃ生活の計画が立てられない。悪気はないんですけどね……」

彼女は「悪気はない」を繰り返します。とうとう、夫に振り回されるのに疲れて離婚を申し出たのが結婚して8ヵ月後でした。

離婚届にすんなりサインしたはずなのに、ノリコさんが子どもを連れて実家に戻ると、彼は毎日のようにやってきました。子どもの顔が見たい、ノリコに会いたい、と。泣いて謝ることもありました。

「ちゃんと収支を報告してほしいと言ったら、それもやるから戻ってきてほしいと。しかたがないので、戻りました。私も彼には未練があったんですね、きっと」

再婚して3年が経ち

再度、婚姻届を出しました。その後、生活再建のために渋る彼を説得して、彼の経済状況を洗いざらい出してもらうと、結婚当初あった借金は、彼の親が返済してくれたと判明。でもその後、また100万円ほどの借金ができていました。

「3年ほどがんばったけど、のらりくらりして一向にきちんと生活費を入れない彼にうんざりして、30歳過ぎたころにまた離婚しました」

今度は夫も追ってはきませんでした。あとから共通の知り合いに、夫には女性がいたと聞かされ、彼女はショックを受けました。

「なんだかんだ言っても、彼と合うのは私だけだと思っていたんです。私、まだ彼のことが好きだったんですよね。だけどもう、一緒にはやっていけない。男性としては魅力的だけど夫としては最低でしたから」

彼のことを忘れて生きていこうと決め、彼女は仕事に精を出しました。男は裏切っても仕事は裏切らない。そう心に誓いました。

「ようやく仕事のおもしろさも怖さもわかってきたのがここ数年ですね」

彼もときどき、子どもの顔を見に来てはいましたが、彼女はほとんど彼と言葉を交わすことはありませんでした。

しかし事態は急展開

ところが1年前、彼が深刻な顔でやってきました。会社が倒産してしまったというのです。原因は共同経営者の親友が、お金を持ち逃げしたからだそう。あんなに堅く見えた人が、と彼女は驚きました。

「夫みたいなちゃらんぽらんな人が、意外にも仕事には堅実で、あんなに誠実そうに見えた人がお金を持ち逃げするなんて、人ってわからないものだなと思いましたね」

ずっと独身だった共同経営者は、あるとき突如、フィリピンパブの女性にはまり、会社の金を貢いだあげく、彼女とともに行方がわからなくなったそうです。彼はなんとか会社を存続させようと思いましたが、ついに力尽きたとか。

「オレはすべてを失ったよと力なくいう彼に、私、結婚しようかとつい言ってしまったんですよね(笑)。落ち込んでいる彼を見たくなかった」

今、彼は新たに知り合いが経営している会社を手伝うようになりました。給与明細もノリコさんに渡してくれています。

「夫が堅実な人になってしまったのは、ありがたいけどちょっと物足りない(笑)。でもようやく落ち着いた生活ができているのも事実です。夫はまだ40歳ですから、今後、何かやらかしてくれるんじゃないでしょうか。それも楽しみ。天真爛漫というか直感で動きまくる夫のこと、今の私なら受け止められる気もしています」

同じ人との3度目の結婚で、彼女はようやく彼と本物の夫婦になりつつあるような気がすると笑みを見せました。

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