早大が取り組む新しい形の野球普及活動 イベントにOBの日本ハム斎藤、元DeNA田中ら参加

「野球遊び」を通し子どもへスポーツの楽しさを伝えている【写真:広尾晃】

地域の子ども達にグラウンドを解放するイベントの特別版

 早稲田大学野球部は8日、東京・東伏見の早稲田大学野球部のグラウンドで小学生を対象とした野球教室「Hello!WASEDA あそび場大解放! 現役野球選手と野球あそびで楽しもう」を開いた。同部OBの日本ハム斎藤佑樹投手、JR東日本の丸子達也内野手、今季まで同部コーチの田中浩康氏、さらに現役の同部員、慶應義塾大学野球部が参加した。

 このイベントは早稲田大学が行う「Hello!WASEDA あそび場大解放!」の一環。今年は六大学リーグの合間に8回、同部グラウンドを地域の子ども達のために開放しており、さらなるステップアップのために企画された特別版。「野球教室」ではなく、“野球遊び”の機会を与えることで、指導ではなくスポーツの楽しさに触れてもらう狙いだ。

 抽選で選ばれた130人の小学生が参加したが、その大半は野球の経験がほとんどない子ども、または野球の経験は少しあるが、クラブやチームには所属していない子どもだ。野球経験が少しある子どもは最初から野球形式のゲームを楽しんだが、そうでない子ども達には“野球遊び”を用意し、“ならびっこベースボール”やティーボール、フリスビーなど、野球の動作に似た遊びを楽しんだ。

 この日はボール投げ測定をイベント前後で2回実施したが、野球経験がほとんどない子も含め平均して2メートルも遠くへ投げられるようになっていた。中には8メートルも距離を伸ばした子も。スポーツ庁の調査によれば、近年はボール投げ能力の低下が著しくなっており、11歳男子のソフトボール投げは30年で約5メートルも落ちていた(2018年度体力・運動能力調査)。子どもたちは遊んでいただけで指導は受けていなかったが、それでも効果は絶大だった。

 この会を企画した早稲田大学OBの1人は「今後は、野球経験はあるがクラブやチームに所属していない子どもで試合をやってもいいと思う。ただし、指導者はなしで。遊び場開放の日に子どもたちがバット1本担いでやってきて、その場でチームを作って野球を楽しむ。そういうのを続けて野球の楽しさを広めていきたい」と語る。昭和の時代、日本全国で自然発生的に起こった「草野球」「野球ごっこ」を再現するようだ。

 野球競技人口の裾野拡大に関する活動は全国で行われているが、早稲田大学の「Hello!WASEDA あそび場大解放!」のコンセプトと方法論は、大いに参考になるのではないか。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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