F1オランダGPの舞台ザントフォールトに18度バンク誕生。故ホワイティングがコース設定に精魂傾ける

 F1の2020年シーズンスケジュールに組み込まれたオランダGPの舞台となるザントフォールトサーキット。同地でのF1開催は1985年以来で実に35年ぶりとなる。F1レースの復活に向けて、数カ所にバンクのあるコーナーが設計されているが、これは今年3月に急逝したFIAレースディレクター、チャーリー・ホワイティングの熱心なサポートによって起案されたものだという。

 オランダGP主催者たちは2020年の大イベントに向けて、ザントフォールトの歴史的なコース改修を行っている。

 ほとんどの作業は、F1を開催するためのインフラの改良だが、サーキット自体にもいくつか調整が加えられ、ターン4のフーゲンホルツ・コーナーと、最終右コーナーのアリー・ルイエンダイク・コーナーにも改修が行われる。アリー・ルイエンダイクはインディ500で2度の優勝を飾ったオランダ人ドライバーだ。

 双方のコーナーには18度の傾斜角度がつけられる予定で、インディアナポリス・スピードウェイよりも急勾配になる。これがF1ドライバーの注意を引くことは間違いないだろう。

 オランダGP運営責任者のエリク・ウエイヤーズは、2019年F1シーズン開幕直前のメルボルンで急死したFIAレースディレクターのチャーリー・ホワイティングが、バンクを設定するアイディアの推進を支持していたことを明らかにした。

ザントフォールトのコースレイアウト設定に尽力した故チャーリ・ホワイティング

「彼は、グラベルトラップや短いピットレーンなど、サーキットのレイアウトについて非常に熱心だった」とウエイヤーズは語った。

「ルイエンダイク・コーナーでは、彼はクラッシュバリアをコースすぐのところに設置することを提案した。そうすればコースを外れた時の衝撃が緩和される。コースから距離が離れるほど、角度と衝撃が大きくなる」

「サーキットを訪れたある日、オフィスに戻った我々は、『バンクをつけるのはどうだろう?』という話をした。アリーにもぴったりだ。彼のルーツがアメリカにあることを考えるとね。我々はそのアイディアをFOM(フォーミュラ・ワン・マネージメント)に持ち込んだ。彼らも熱心で、こうしてバンクは実現した」

今年亡くなったチャーリー・ホワイティングを偲ぶ声が世界から寄せられた

 ザントフォールトはイタリアの建築企業ドローモに改修を委託している。

「我々は専門家が必要だと認識していた。そのためドローモに連絡をとった」とウエイヤーズは付け加えた。

「我々の考えを伝え、ザントフォールトを昔ながらのサーキットに留めたいという説明を行った。彼らはそれに基づいて作業を始め、それは非常にうまくいった」

 FOMの代表団が初めてザントフォールトを訪れた後、オーバーテイクが難しいことで悪名高いこのコースで、どのようにオーバーテイクを増やすかについて話し合ったという。

「2017年の1月に話を戻すと、フォーミュラワン・マネジメントの人々が施設とサーキットを初めて見学に来た。彼らは”昔ながらのサーキット”にとても魅了されていたよ」とウエイヤーズは振り返った。

「我々は、コースについて変更はほとんどできないと指摘した。ストレートを200メートル伸ばすなどできないからだ」

「その後我々はFOMの技術担当者たちに会い、ザントフォールトをどのようにしたら”セクシー”でオーバーテイクに適したコースにできるか話をした」

「最初のアイディアはターン13をシャープにするか、シケインを入れてスピードを落とさせるというものだった。そうすればドライバーは最初のターンに向けて全開で加速し、早い段階でDRSを利用できるからだ」

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