【世界というキャンパスで 分部麻里(文・4年)東南アジア編⑥】日本と違う?働き方の感覚

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【前回までのあらすじ】
インターンシップ先であるカンボジア・シェムリアップのスパで一通りの業務に慣れた頃、後輩の指導を任されるようになった。指導を進めるにつれ、文化や言語の異なる後輩たちへの教育の難しさを痛感していった。

セラピストが施術を行う部屋。窓の外にはスパのガーデンが広がる
シェムリアップ郊外の様子。スパのスタッフの多くは、市街地から離れた郊外からバイクで通勤していた

インターンシップ先での勤務を始めた頃は、同僚たちの中で一番私が新入りだった。それ故、仕事上のことでもプライベートなことでも、分からないことがあればみんなが気遣って教えてくれていた。日本語が分からないスタッフたちも、身振り手振りで私のフォローをしてくれて、とても心強かった。

勤務に慣れた頃、後輩への指導に加え、私の上司が担当してきたマネジメントの業務も少しずつ私が担当するようになってきた。例えば、どのお客さまに誰がマッサージをするかというような業務の割り振りやセラピストの育成などだ。インターンシップ先のスパでは独自の試験に合格したセラピストのみが施術に当たることができる。試験に合格する前のセラピストの練習の付き添いや、接客面での指導の一部も私に任された。

業務内容が変化してから、一番に感じた難しさは「働き方に関する文化の違い」だった。セラピストたちは業務時間が延びることや、他の人よりも自分が多く働くことを嫌う。自分が他の人よりも長い時間接客をするときや、夜遅くの予約に入らなければいけないときなど「私は接客に入りたくない」と、セラピストの間でもめ事が起きた。

私が一番困ったのは、たまたま上司が休みの日、日本人スタッフが私しかいない状況で、営業時間の終わり際に予約が入ったときだった。本来の営業時間よりも少しだけオーバーした予約を私がとったため、セラピストを1人残業させなくてはならなくなった。スタッフが1人しか空いていなかったため、残業を頼んでも「マリ、私は今日午後7時に帰る予定でしょ。残れないよ」となかなか仕事を引き受けてもらえない。日本語が分かるスタッフに通訳をお願いしながら、なんとか残業を引き受けてもらった。

こういうとき、接客中のサービスの質が下がり気味になってしまうのも問題の一つだ。残業した彼女は接客中はプロ意識を持って業務に当たっていたようだったが、バックヤードに戻るたびに不機嫌そうな表情で誰とも話をしようとしなかった。彼女を一生懸命なだめながら、なんとかその夜の予約を乗り切った。

お客さんが帰った後「時間外に対応してもらえてお客さんがとても喜んでいたよ」と接客後の彼女に伝えると、機嫌を直してくれたのか、うれしそうにはにかんで、特別に用意した夜食を片手にさっそうとバイクに乗って職場を後にした。なかなか接客に入ってくれないスタッフたちには正直かなり手を焼いたが、すぐにけろっと機嫌を直して明るい笑顔を振りまくカンボジアの人々を見ていると、なんだか憎めないなと思ってしまうのだった。

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